甘えん坊にはいいことも!?甘えん坊のお子さまへの接し方

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甘えん坊にはいいことも!?甘えん坊のお子さまへの接し方

いつも保護者の手を離さない、頻繁に「見て見て!」「○○って何?」「抱っこして!」と言ってくるなど……お子さまの甘えをかわいらしく思いながらも、「大きくなってもこのままだったらどうしよう」「ちゃんと自立してくれるんだろうか」と不安に思っている保護者のかたもいらっしゃるかと思います。甘えん坊のお子さまには、どのように接するといいのでしょうか?

今回は、発達心理学・幼児教育の専門家である東京家政大学の岩立京子先生に、甘えん坊のお子さまに対する上手な接し方についてお話を伺いました。

幼児期の甘えん坊はOK! 受け入れることが自立につながる

幼児期の甘えん坊はOK! 受け入れることが自立につながる

甘えん坊の特徴は?

特に甘えの強い子どものことを、「甘えん坊」と呼ぶことがあります。甘えん坊の「坊」には、「子どもはいずれ自立すべきであるけれども、まだ自立できていない」という子どもへの見方が含まれています。

幼児期の「甘え」の例を挙げると……

・抱っこなどのスキンシップを求める

・できるのに「できない」「やって」と言う

・思いどおりにならないと怒る

・何でもママ(パパ)がいいと言う

・すぐに「何で? どうして?」や「見て!」「見てて!」と言う

などがあります。

甘えは、「この人なら自分の気持ちに寄り添ってくれる」と思っているから出てくる信頼の証しです。つまり、甘えん坊は、決して悪いことではないのです。

幼児期の甘えはできるだけ受け入れてあげよう!

「甘えを受け入れすぎると、自立できなくなるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、甘えをたっぷり受け入れることで……

保護者のかたとの愛着(信頼関係)が深まる

保護者のかたが自分を守ってくれる安全基地となる

心が安定する/自己肯定感が高まる/個性を発揮する

少しずつ外の世界へ挑戦/充実感・達成感/自立心の芽生え

とお子さまの心が変化していきます。

子どもの甘えを受け入れることによって、保護者のかたとお子さまとの「愛着(信頼関係)」が深まります。愛着が深まると子どもは安心感を得られ、自信を持って新しいことに挑戦する意欲が育ち、それが自立へとつながっていくのです。

スキンシップや自分でできるのに「○○やって!」とねだるなどの子どもの甘えは、3歳ごろまではできるだけ受け入れてあげるのがよいでしょう。

甘えを受け入れる際の3つのコツ

甘えを受け入れる際の3つのコツ

子どもの甘えを受け入れないと、安定した愛着が形成されにくく、子どもの情緒が不安定になり、いろいろな問題行動につながることがあります。そのため、甘えを受け入れることは大切です。しかし、一般的にお子さまの自立心が芽生える3歳くらい以降の場合、欲求のすべてを受け入れることは、自立心の発達を妨げる場合もあります。ここでは、甘えを受け入れる時のコツを見てみましょう。

「やってあげる」と「一緒にやる」のバランスを取る

お子さまに何か「やって」と求められた時、もし「やらせてみたらできそうだな」と思ったら、「やってあげる」と「一緒にやる」のバランスを考えてみてください。

たとえば、お子さまに「靴を履かせて」とお願いされたら、靴に足を入れるのはお手伝いしてあげて、最後の面ファスナーを留めるところはお子さまがするなど、保護者のかたが手伝う部分とお子さまが自分でやる部分をつくってみてください。そして、できたらしっかりほめましょう。

そうすると、子どもは「自分でもっとやりたい」と思うようになります。子どもの成長に合わせて、できる範囲を広げていく工夫をしていけるといいですね。

甘えの行動に適度な制限を設ける

甘えがずっと続くと、「甘えすぎて自立できないのでは」「甘えさせすぎているのでは」と思う時があるかもしれません。

しかし、甘えを受け入れてもらえないと、より甘えに執着するようになり、結果としていつまでも甘えてくる……という場合があります。甘えが続く時は、甘えたい気持ちを理解し、甘えを受け入れつつも、徐々に自立を促していくのがよいでしょう。

たとえば、自分で食べられるのに「食べさせて」といった甘えは、「自分でできるでしょ!」と言うより、一口二口食べさせてあげ、そのあとは自分で食べてもらうのがおすすめです。一口二口であっても、子どもは「(甘えを)受け入れてもらえた」と、満足する可能性があります。

甘えさせられない時は感情の共有を心がける

甘えさせたいけれど、「今は無理」という時はありますよね。
そんな時は、「今は忙しいけど、終わったら遊ぼうね」「腰が痛いから立って抱っこはできないけど、座って抱っこならいいよ」のように、保護者のかた自身の気持ちをきちんと伝えることが大切です。

言葉を理解できない1歳半くらいの赤ちゃんであっても、保護者のかたの表情や感情は感じ取れることがあります。言葉だけでなく、表情やジェスチャーも使って、感情を共有してみてくださいね。保護者のかたの気持ちを伝えることは、子どもの共感力を育むことにもつながります。

【Q&A】甘えん坊って難しい……こんな困った時はどうしたらいい?

【Q&A】甘えん坊って難しい……こんな困った時はどうしたらいい?

Q1:スーパーで毎回お菓子をねだられ、ついわがままを聞いて買ってしまいます。どうしたらいいですか?

A:スモールステップで軌道修正していきましょう。

お菓子やおもちゃなどを、ねだられる度に買い与えてしまうと、自分の欲求が通るのが当たり前になり、我慢ができなくなる可能性があります。とはいえ、10受け入れられていたものをいきなり0にするのは、お子さまも保護者のかたも大変ですので、少しずつ我慢をする機会がつくれるといいですね。

・毎回おやつを複数個買っていたなら1つだけにする

・毎回買っていたものを2回に1回にする

・お菓子への欲求や関心を他の物事にそらす

のように、スモールステップで軌道修正していきましょう。お子さまと一緒にスーパーやおもちゃ売り場に行かないという対策もおすすめです。

Q2:「今日は忙しくて甘えさせてあげられなかった……」と思った時はどうしたらいいですか?

A:気持ちを素直に伝えてみましょう。

保護者のかたは、家事・子育て・仕事などに忙しくされていることでしょう。「甘えさせてあげられなかった……」と思うこともきっとあると思います。

そんな時は、「今日は忙しかったんだ。ごめんね」と伝えて、甘えさせてあげれば大丈夫です。子どもが甘えたいタイミングから時間がたってしまったとしても、保護者のかたの「甘えさせてあげたかった」という気持ちに、子どもはきっと安心できるでしょう。

Q3:子どもの時はいいけれど、今後自立させないといけないと思うので、「しっかりして」と伝えるのは大丈夫ですか?

A:甘えたい気持ちは受容し、少しずつ自立できるように援助していきましょう。

「しっかりして」「ちゃんとして!」と伝えるよりも、お子さまが甘えてきた時に、一緒にやりながら、少しずつ自分でできる部分を増やしていきましょう。

甘えを受け入れてもらえたお子さまは、安心感が得られ、「自分でやってみよう」という意思が芽生えます。自立と甘えを繰り返すこともありますが、甘えを受け入れたらまた自立に向かえるので、安心してくださいね。

まとめ & 実践 TIPS

甘えは、お子さまと保護者のかたとが愛着(信頼関係)を築き、自分の力で歩み始めるための大切な欲求であり行動です。幼児期の甘えを十分に受け入れることで、子どもは小さなチャレンジを繰り返し、充実感や達成感を経験しながら自立し、より大きな世界に向かって羽ばたいていきます。甘えを受け入れることと手を離していくことのバランスやタイミングは難しいです。試行錯誤しながら、お子さまの自立心が育めるといいですね。

編集協力/海田幹子、Cue`s inc.

プロフィール


岩立京子

東京学芸大学名誉教授、東京家政大学子ども支援学部教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士の研修や、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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