子どもに「~しなさい」と言わない効果[やる気を引き出すコーチング]

半年間、コーチング講座に通ってくださったAさんは、大学生、高校生、小学生の3人のお子さまを持つお母さんです。最終回で、こんな興味深いお話をしてくださいました。

「この半年間で、本当に子どもたちが変わったんです。もう、びっくり!びっくり!すごくたくましくなりましたよ。以前は、何回言っても聞かないし、ちょっとうまくいかないと、すぐあきらめてしまうような子どもたちでした。最近は、うまくいかなくても、自分で考えて解決しようとしています」。
「どう関わったら、そんなふうに変わられたんですか?」。ここは聞かずにはいられないポイントです。

黙って見守る

「私がいちいち口を出すのをやめたんです。『宿題やりなさい』とか『早くしなさい』とか。もちろん、忍耐は要りますけど、『言わなくても自分でできる子だ』と子どもを信じて、極力黙って見守ることにしました。コーチングを知る前は、何回も言わないとダメだと思っていました。でも、それって、子どもを『言わないとやらない子』として扱っていたってことですよね。

よくよく観察してみると、子どもは子どもなりに考えてやろうしていることもあるんだなあとわかりました。それを先回りして、『やりなさい』と言ってしまうから、子どもたちはやる気をなくすんですよね。やらない子にしてしまっていたのは、こっちだったってことなんです。言いたくなる瞬間もありますけど、口を出さないで見守るようにしたら、本当に子どもが変わっていったんです!」。
Aさんの言葉には、体験を通して得られた力強さがありました。

指示命令より「任せる」

さらに、Aさんは、こんなお話もしてくださいました。

「休みの日に、小学生の子どもと一緒に、ちょっと遠くに出かける機会があったんです。行き方とか電車の乗り方とか、私が『一緒についてきなさい』と言って、連れていくのではなくて、全部、子どもに任せてみました。帰ってきてからが、またすごく変わったんです! 自分に自信がついたようで、今まで以上に、自発的に考えて動くようになりました。自分で考えてやってみるってすごく大事ですね!」

「任せる」こともまた、根底に、相手に対する「信頼」がないと、なかなかできないことです。「できるんだろうか?」、「失敗するんじゃないだろうか?」と思ってしまうと、つい、口を出したり、手を出したりしたくなります。

「~しなさい」と指示命令をするのではなく、子どもを信頼して、「~したいんだけど、どうしたらいいと思う? お願いしてもいい?」と全面的に任せてみるのは、とても効果的だと思います。おつかいでも、片付けでも、ささいなことからでよいのです。

「勉強しなさい」と言われないで育った子どもたち

私は日頃、コミュニケーション力も意欲も非常に高く、「頼もしい子だな~。きっとすばらしい社会人になるにちがいない」と思う高校生や大学生に出会うと、「親御さんはどんなかたですか?」と、つい質問してしまいます。返ってくる答えで、共通しているのは、
「親から『勉強しなさい』と言われたことはないですね」という答えです。「基本的に何も言いませんが、見守ってくれている感じはします」。そんな答えが返ってきます。「勉強しなさい」と言わないほうが、よほど子どもを成長させるのではないかと思ってしまいます。

「~しなさい」と言われないことで、自分で考え、自分で決めて、自ら行動できる人になっていくのです。自分で行動できた体験が、自信につながります。言って聞かせることで、多少動いたとしても、「親から言われてやった経験」は、その子にとって、真に「生きる力」となり得るでしょうか。

勇気と信頼を持って、「~しなさい」と言うのをやめてみませんか。Aさんのように、「びっくり!びっくり!」なことがきっと起こるはずです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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