NHK Eテレの教育番組を担当する、NHK制作局チーフ・プロデューサーの桑山裕明氏。多くの授業を見る中で、「こんな先生に教えてほしい」と思うことがあるという。今回は、子どもたちの力だけで学びを深めていくのを「理想の授業」とする愛知県のAN先生。ベネッセ教育情報サイトでは、小学6年生の電磁石の授業を通じて子どもたちがどのような学びを得ていくのか、その様子を伺った。***電磁石の授業にAN先生が用意したのは、魚釣り大会。先生手作りの釣りざおの先端には電磁石が、魚にはホチキスの芯が取り付けられており、班ごとに5回、釣りに挑戦します。大きさに合わせて点数が書かれた魚のカードを釣り上げ、その合計点を競いました。実は、先生が釣りざおに取り付けた電磁石の力では、大きな魚は釣れません。そこで、「どうしたらもっと力の強い電磁石になるのか?」を考えることにしました。一人ひとり電磁石の改造計画案のアイデアを書き出し、みんなで話し合いながらまとめると、電磁石を強くできそうな方法が絞られてきました。たとえば、「電池を増やす」「鉄芯の温度を変える」「エナメル線の本数を増やす」などです。この中で、自分が調べたいことを選び、「学習課題」「予想」「準備」「実験方法」をまとめた計画書を書きます。先生は、「何度と何度で比べるの?」「比べるのを2つにする理由は?」など、疑問点を指摘。子どもたちは答えながら自分の考えを整理し、論理的に考える方法をつかんでいきます。そして各自が選んだ仮説での実験がスタート。次々と驚きの結果が出て、気付きの連続です。「みんなで同じことをやると友達がやっているのを見て、わかった気になってしまう。でも、一人ひとりが実験すると、自分で解決しようという意欲が出てくる。それが理解を深めることにもつながる」こう語る達人の授業は、自らの手で確かめ、気付いたこと、わかったことがふくらむ授業でした。