夏休みの課題の定番! 自由研究を通して得られる力とは?
夏休みの課題の定番といえば、今も昔も自由研究。「テーマはどうしようか……」と苦悩する我が子の姿に重ね合わせて、自分の子ども時代を思い起こす保護者のかたもいるかもしれません。この自由研究には、いったい、どのような教育的な意味があり、取り組むことで、どのような力が得られるのでしょうか。
これからの社会を生きる上で不可欠な力が育つ!
じつは、もとをただすと、かつて「自由研究」は、教科の一つとして定められていました。戦後の教育改革が図られた1947(昭和22)年の学習指導要領で、子どもの自発的な活動を促すため、教師の指導のもと、それぞれの興味と能力に応じて、教科の発展学習などを行う時間として設置されたのです。しかし、教科としての歴史は短命で、1951(昭和26)年の学習指導要領で自由研究は発展的に解消され、子どもの自発的な活動は教科以外の活動の時間(クラブ活動、児童会、学級会、学校図書館など)の中で育てられることになります。戦後のごく一時期だったため、自由研究という授業があったことはあまり知られていません。
時は下って、2000年度から段階的に始まった「総合的な学習の時間」は、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどをねらいとしており、戦後の自由研究の理念と類似したところがあります。「総合的な学習の時間」の授業を受けたことがない保護者のかたがほとんどかもしれませんが、地域社会や環境をはじめ、身近な問題をテーマとして、子どもたちが主体的に学ぶスタイルで進められています。
昨今、世の中では、知識基盤型社会化やグローバル化などが言われ、基礎的な学力に加え、コミュニケーション力や課題解決力、論理的思考力、創造力など多様な力の育成が各方面から求められています。「総合的な学習の時間」は、そうした社会変化への対応の一つとして設置されました。自由な時間が多く取れる夏休みに自分が興味をもっていることをテーマに定め、じっくりと調べたり、観察したり、ものづくりをしたりする自由研究の進め方は、「総合的な学習の時間」のそれとよく似ています。「総合的な学習の時間」と同様、自由研究でも、これからの社会を生き抜くうえで大切とされている力の育成が期待できると言えるでしょう。
自由研究は、個の力を高める絶好のチャンス
「総合的な学習の時間」は教員の指導があり、グループ活動が多く展開されますが、自由研究は保護者のサポートはあるものの、基本的には一人で学び進めます。それだけに難しさはありますが、個の力を高めるためには絶好の機会と言えるでしょう。それぞれの興味や能力に応じてテーマを設定して取り組めることも、自由研究の大きな利点です。あまり勉強は得意じゃない……というお子さまでも、興味や関心をもてるテーマは必ずあるはずです。自分が好きなことなら意欲をもって学べますし、独力で調べたり、学んだり、まとめたりする経験や、完成させたことで得られる達成感は、他の学習にもつながるに違いありません。また、当初の計画どおりにスムーズに完成させることはもちろん素晴らしいですが、仮に途中でつまずいたとしても諦めずに続けられれば、そのことが大きな自信となるでしょう。
こうした自由研究のねらいを理解すれば、「形だけ整えて提出すればいい」といった安易な考えにはつながりにくくなるはずです。ぜひお子さまにも、自由研究を通して実にさまざまな力が育つことを説明し、意欲を引き出してあげましょう。