どうしたら「夢はかなう」と子どもは思えるのか?[やる気を引き出すコーチング]

時々、小中学校でも講演をさせていただきます。テーマは「夢をかなえるコミュニケーション」。コミュニケーションしだいで、夢はかなえられるんだということを、子どもたちに伝えています。講演の冒頭で、私が、必ず投げかける質問があります。

しだいに現実的になる子どもたち

「皆さん、夢はかなうと思いますか? かなわないと思いますか?」。
小学生だと、まだ半分以上の子どもが「かなうと思う」に手を挙げます。ところが、中学生になると、「かなわないと思う」に手を挙げる子が6~7割と逆転します。これは、あくまで、私が接してきた小中学生の傾向なので、すべてがそうだと言いきれるものではありませんが、やはり、しだいに大人になり、現実的になっていく表れなのでしょうか。

「しょせん、かなわない」と思って生きるのか、「きっとかなう」と思って生きるのかでは、日常のやる気や行動がまったく違ってくることは明白です。当然、「きっとかなう」と思って生きていってほしいなあと思いますが、だんだん現実的、そして、悲観的になっていく子どもに、どう関わったら、前向きな気持ちを持ち続けてもらえるのでしょうか。

大人が「夢をかなえた体験」を語る

私のコーチング講座に通っていた受講生のかたで、大学卒業後、4年間、民間企業で働き、その後、小学校の先生に転職した人がいます。どうしても、「学校の先生になりたい」という子どもの頃からの夢をあきらめきれず、思いきって退職し、見事に転身しました。

「夢ってかなえられるんですよね」と、しみじみ話されていましたが、こういう実感を持った先生が、自分の体験を語ることで、子どもたちもまた、「かなえられるんだ」と思うようになっていくのではないかと思うのです。

この先生は、教員になってからもまた、おもしろい体験をされたようです。
「私、コーチになって、いろんな人の相談にのる仕事をしてみたいなあと思ったこともあったんです。今では、定期的に、保護者のかたの相談にのる機会があって、コーチングを活用しています。まるで、プロコーチ並みの頻度で面談をしていますよ。あと、子どもの頃、ゴルフのコーチにもあこがれたことがあったんですけど、この前、修学旅行の引率で行った先で、子どもたちにゴルフを教える機会があったんです。こんな形で、夢ってかなうんだって思いました。『やりたいと思ったことはいつか必ずやれるんだよ』と子どもたちにも話しています」。すばらしい先生だと思いませんか。

「自分が夢をかなえた経験がないから、子どもに言う資格がない」とおっしゃるかたもありますが、よくよく思い出してもらったら、あこがれたことや、やってみたかったことがやれたという体験が何かしらあるのではないでしょうか。それをぜひ、お子さまにも伝えてみてほしいのです。

小さな「ゆめかな体験」を共有する

知人のAさんが、こんな話をしてくれました。
「この前、初めて、小学生の息子とマラソン大会に出たんですよ。子どものほうは、あまり乗り気じゃなかったのですが、『大人になって、自分の息子と一緒にマラソン大会に出るのがお父さんの夢だったんだよ! 今日は夢がかなったよ!』って私が言ったら、子どもも嬉しそうにしていて、けっこうがんばって走っていました。『来年も走る!』と言っていましたね」。Aさんの表情から、二人にとって、とても楽しい時間だったことが伝わってきました。

「夢」と言うと、とてつもなく大きなことやチャレンジングなことでなくてはいけないというイメージを持たれがちですが、身近な小さなことから、「かなったね!」という体験を積み重ねていったら、「かなうんだ!」と子どもも思えるようになるのです。

年の初めに、「今年やりたいこと」を一緒にリストアップし、「夢がかなったね」という体験(ゆめかな体験)を共有していってはいかがでしょうか。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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