勉強の遅れに不安や焦りを感じている子どもの気持ちにどう関わる?[やる気を引き出すコーチング]

いつもより短かった夏休みも終わり、学校が始まりましたが、例年よりもイレギュラーなことが多い昨今、保護者の方からこんなお声も届けられます。「受験に間に合うかどうかが気になるようで、最近、子どもが不安そうにしているんです」。勉強に対する遅れに不安や焦りを感じているお子さんの気持ちにどう寄り添えばよいのでしょう。参考になる事例をご紹介します。

この記事のポイント

相手の言葉をただ繰り返す

これは、コーチ仲間のAさん宅での中学1年生のお子さんとの会話です。
「またすぐテストがあるんだけど、全然ついていけてなくて焦る」と娘さんがこぼしています。Aさんはそれを否定も賛同もせず、ただ繰り返して受けとめます。
「そう、焦ってるんだね」
ちなみに、否定とは「焦ってる場合じゃないでしょう」といった言い方、賛同とは「そうだよね。本当に焦るよね」といった言い方です。そのいずれでもなく、ただ言葉を繰り返します。
「うん、全然、追いついてなくて・・・、でもやる気もわかない」
「そうか、やる気がわかないのか」
「うん、最近、なんか疲れるし」
「疲れてるんだね」
「そりゃあそうだよ!いつもより授業時間が増えてるし、テストの日も終わってから授業だよ!」
「そうか、テストの日も授業があるんだね」
「そう!・・・って言ってても仕方ないし、がんばるしかないよね」
いつもこんな調子で愚痴を思いっきり言った後は、自分から勉強を始めるそうです。
なかなかこんなにうまくはいかないかもしれませんが、こんなに自分の言葉を受けとってもらえるお子さんもいないように思います。自分が言った言葉をただ繰り返してもらうだけで、少し冷静になれて、自分の内側で自己評価が起きやすくなります。「焦るけど、やる気もわかないけど、でも、この気持ちのままでずっと過ごすのは嫌だな。やっぱりやったほうがいいな」。そう自分で思えたら、自分から気持ちを切り替えられるのです。とはいえ、露骨に繰り返すのはかえって逆効果ですから、穏やかに自然体で相手の気持ちに寄り添うよう繰り返すのがポイントです。

激励するよりねぎらいの言葉を

これは、夏休み前に会った高校2年生のMさんの言葉です。
「学校では、先生から『今年はとにかく時間が足りないから気合い入れてがんばれ!』って、宿題も山のように出されて疲れました。確かに、春は休校でいっぱい休んでたけど、宿題はたくさんあったし、よくわからないことも多くて不安で、よけいに疲れました。うちのママは、『がんばれ』とかは全然言わないんです。『今年の1学期は本当に大変だったね。お疲れ様!』って感じ。そのほうがまたがんばろうかなって思うんですよね」
なかなか素敵なお母さんだと思いませんか。「がんばれ」と言われると、「がんばってるよ!わかってるよ!」と抵抗や反発心がわいてきますが、「がんばってるね。お疲れ様」と言われると、「いや、それほどでもないよ」と思えたり、安心感やエネルギーがわいてきたりします。

現状を客観的にふりかえる

中学生のお子さんが試験前に焦っているのを見ると、「頭の整理を一緒にします」というお母さんがいらっしゃいます。「あと、何をすればいいのかな?やろうと思っていることを全部書き出してみよう」、「これはどこまでできているの?」、「これはいつやろうと思ってる?」と質問しながら、一つひとつ「見える化」していくと、「これだけやればいいのか」とか「まだやれる時間はあるな」ということがわかってきて気持ちが落ち着くようです。
イメージだけで漠然と考えていると、気持ちばかり焦りますが、客観的に現状を書き出してながめてみると、「こうすればいいな」と建設的な思考がわいてきます。そんな思考の整理を手伝ってあげることも効果的ではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

不安や焦りの感情に対しては、「なんとかして消さなければ!」と思いがちですが、「もっと勉強しないと間に合わない」という想いがあるからこその感情です。「別に勉強できなくてもいいし」、「受験に失敗してもいいし」と思っている子どもは不安や焦りを感じたりはしません。「そんな気持ちがわいてくるのは向上心の現れなんだよ」とあたたかく受けとめ、見守ってあげてほしいと思います。

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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