話しかけるとうっとうしがる子どもとどう関わる?[やる気を引き出すコーチング]

「最近は、話しかけると、子どもがだんだんうっとうしがるようになってきました」という保護者のかたの嘆きをよく耳にします。順調な成長の現れの一つだとは思いますが、子どもたちは、どうしてそんなふうになっていくのでしょうか。そのヒントを、ある保育士さんと話している時にもらいました。

ほめる時は名前を呼びかけてから

「子どもをほめる時は、名前を呼びかけながら、プラスの言葉をどんどん伝えるようにしているんですよ。『○○ちゃん、スゴイね!』、『○○ちゃんが手伝ってくれて、とても助かったよ』と、とにかく、ひんぱんに名前を呼びかけるのが大事なんです。何かを注意する時は、ただ『それはダメだよ!』とだけ伝えます。そうすると、名前を呼ばれた時は、何か良いことを言ってもらえるのだと思って、すぐに寄ってきてくれるようになるんですよ」。

この話を聴いて、確かに、私自身にも思い当たることがありました。
高校生の就職セミナーなどで、生徒さんの名前を呼びかけて、話をしようとすると、最初は一瞬、警戒されるのです。「○○さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします」と声をかけたいだけなのに、「○○さん」と言った瞬間に、「何を言われるんだろう?」と委縮しているのがすごく伝わってきます。
“大人から名前を呼ばれる時は何かを注意される時”という条件反射が身についているようにさえ見えます。あまり聴きたくないことを言われると思うと、話したくないなと思ってしまうのは当然かもしれません。

日頃、お子さまの名前を呼びかける時は、どんな場面が多いですか。呼びかけた後、いつもどんな言葉をかけていますか。

「○○ちゃん、もう起きた? 早くしなさい」
「○○ちゃん、また洋服が出しっぱなしだよ」

こんな言葉ばかりだと、声をかけられた瞬間に、うっとうしく思ってしまうのは仕方がないことですよね。

注意する言葉以上に認める言葉を

高校生と接する時に、私が心がけていることは、注意したいことがたくさんあっても、まず、相手を肯定的に認める言葉のほうをたくさん投げかけておくということです。

「おはよう! 早いね!」
「今日は参加してくれてありがとう!」
「素敵なお名前だね」
「きれいな字だね」
「かわいいペンを持っているね」など

どんなささいなことでも、プラスの言葉をたくさんかけておきます。改善してほしいことを注意する時も、先にできていることや強みのほうを多く伝えます。

「相手の目を見て話せているね。笑顔が素敵だったよ。おじぎをする姿勢がきれいだったよ。部活動で一生懸命取り組んだことがすごく伝わってきたよ。私が投げかけた質問に、自分の言葉で答えられていたね。打てば響く感じがとても好印象だったよ。友達を大切にする人なんだなって感じたよ。・・・」など、気づいたこの子の良さをどんどん伝えます。
その後で、「だからこそ、もったいないなあって思うことがあるんだけど、伝えてもいい?」と前置きをしてから、「前髪が目にかかっていると、第一印象で『暗いな』っていう印象を与えてしまうんだよね。眉毛が見えるようにすると、素敵な笑顔がもっと引き立つよ!」などと伝えます。そんな伝え方をすると、どんな生徒でも、素直に聴いてくれますし、その場であらためようとしてくれます。

そんなに大げさなことでなくても、お子さまが当たり前にやっていることなど、どんどん肯定的な言葉にして伝えてみることをおすすめします。例えば、「○○ちゃん、今日も部活、お疲れさま!」、「○○ちゃん、お弁当全部食べてくれて嬉しかった」など、名前を呼びかけながら伝えていくと、向こうからも話をしてくれるようになるのではないでしょうか。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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