ネガティブな子どもとどう接しますか?[やる気を引き出すコーチング]

「子どもたちって、どうしてこんなにネガティブなんだろう!?」
学校での講演会に招かれて、最近しみじみ感じます。

「皆さん、日頃、よく使っている口癖って何ですか?」
と生徒さんに問いかけて、返ってくる言葉は……、
「疲れた」「眠い」「ダメだー」「つまんない」……。
あぜんとします。

講演後の感想文を読んで、またまた複雑な気持ちになります。
「夢をあきらめていたけれど、今日の話を聞いて、あきらめなければ夢はかなうと思えた」
「最近、自分は疲れていてネガティブだったけど、やっぱり、前向きな言葉や考え方は大事だと思った」
わたしが出会った中学生・高校生の8割がこんな論調です。まだ10代のうちから、このように思わせてしまう現実っていったい何なのでしょう?
確かにわたしもネガティブな子どもだったと思いますが、日頃から、もう少し前向きで建設的な思考癖を身に付けられないものでしょうか。


「楽しかったこと」「嬉しかったこと」を質問する

わたしのコーチ仲間のTさんは、中学2年生の娘さんに、毎日、こんな質問を投げかけているそうです。
「今日、学校でどんな楽しいことがあった?」
「今日、一番嬉しかったことは何?」
質問を投げかけられると、人はとりあえず考えます。どんな質問でもそうです。たとえば、
「今日の朝ごはんは何を食べましたか?」
「昨日、お子さんとどんな話をしましたか?」
と聞かれると意識がそこにぐっと集中します。

Tさんの娘さんも質問をされると、今日一日を振り返りながら答えてくれるそうです。ところが、毎日毎日聞かれると、娘さんもだんだんうっとうしくなってくるようです。
「別に……。毎日、聞かれてもそんなに毎日何もないよ!」
「そう。わたしは、あなたの楽しかった話を聞くのがすごく好きなんだけど。毎日楽しみにしてるんだけど」
とIメッセージ(「わたしはこう感じた」と自分の気持ちを伝える)で対話をしていきます。
そんなことを毎日繰り返していると、娘さんのほうから、
「お母さんにまた聞かれると思ったら、今日はどんな楽しいことがあったかなって、毎日探すようになってきたよ」
と言われるようになったそうです。
確かに、最初は「うざい!」と思われるかもしれません。しかし、放っておくと、ネガティブな情報ばかりが入ってくる昨今の環境の中で、ポジティブな部分に意識を向けさせる習慣づけはとても大切なのではないかと思います。


「ラッキーだったとしたら?」を考えさせる

「第1志望、受けたんですけど、不合格だったんですよ。自分、ダメですよね」
就職志望の高校生たちが、そろそろ最初の挫折を感じるころです。
「そう。不合格だったんだ(まず受容)。よくチャレンジしたね(承認)。初めて就職試験を体験してみてどうだった?(質問)」
就職カウンセリングでは、こんなやりとりの中から、次のチャレンジへの意欲を引き出していきます。
「第1志望に合格できなかったことが、○○さんにとってラッキーだったとしたら、どう思う?」
「えー!?……」
こんな質問をされたら、確かに戸惑う生徒もいますが、視点の転換にはなるようです。
「一番行きたかった会社に行けないのなら、もうどこにも行きたくない」
「このあともまた落ちるんじゃないか。やっぱり自分は何をやってもダメ」
そんなマイナス思考から、少し視点を外して考えるよう促すと、
「もっと、自分に合っている会社があるかもしれませんね」
「今回は練習だったと思えばいいですね」
などの前向きな言葉が引き出されます。

子どもたちの周りにいるわたしたち大人が、日頃から、何に対しても悲観的・批判的な視点で見るのではなく、「ラッキーだったとしたら?」という楽観的・肯定的な視点でとらえる器があれば、子どもたちももっと前向きに自分の可能性を伸ばしていけるように感じます。


プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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