こんな時、どうする? 言っても“動かない”子どもとの接し方[やる気を引き出すコーチング]

小学生も参加するコミュニケーション講座を折々にやっていますが、子どもたちと接するなかで、さまざまな気付きがあります。そうしたなかの一つをご紹介しましょう。

集中してくれない子ども……

基本的に、親御さんにムリヤリ連れてこられたお子さんは、まったく講座に興味がありません。準備したカリキュラムで、時間どおりに始めたいのですが、これから何が始まるのかよりも、目の前に置かれている小道具やスマホのゲームなどが気になってしょうがない様子のお子さんもいます。こちらに集中する気配もなく、それらをいじり始めます。親御さんもイライラモードです。

それでも、「はい! ここに座って! 話を聴いて!」と注意することは、コーチングのプロとしては、決してしたくないことです。講座(勉強)に集中してほしいけれど、強制はしたくない。自発的に取り組んでほしい。こんな時、どうしたらいいのでしょう?

子どものペースに合わせる

先日も、目の前に置いてある色鉛筆をいじって、こちらに集中しようとしない小学6年生の女の子がいました。開始時間にはなりましたが、しばらく様子を見守りました。両手いっぱいに握った色鉛筆を、鉛筆立てに差し込みたいようですが、一度にたくさん握っているので、なかなかうまくいきません。それを何度もやり直しているのです。

「どうしたいの?」と声をかけました。「これを全部、ここに入れる!」、「そう! じゃあ、手伝うね」。私が鉛筆立てを両手で支えて固定し、共同作業で、なんとか成功させました。「できた!!」それで落ち着いたのでしょうか。話を聴く態勢になってくれました。

ある時は、ゲームに夢中になっている子どもがいました。この時も、「もうそろそろ始めるので、ゲームはやめてね」とは言わず、一緒にスマホをのぞき込みました。「おお! すごいね!」「これは難しそう!」「○○ちゃん、うまいね!」と相手の気持ちに寄り添いながら声をかけてみました。自分が「ここまでは」と思うところまでやったら、安心したのか、スマホを手放して、こちらを向きました。

こんな瞬間に、「子どもって本当に面白いなー!」と思います。子どものペースに合わせて寄り添っているうちに、逆に、こちらのペースにも合わせてくれるようになるものです。

「完了感」が持てると子どもは動く

子どもが、今、意識を向けていることをいったん完了させると、その後の学びの時間にも集中してくれることがわかってきました。ところが、「完了感」がないうちに、「早くしなさい。もうやめなさい」と強制的に動かそうとすると、かえって抵抗が起き、よけいに時間がかかるように思います。

先日、親御さんの一人、Aさんが面白い出来事を教えてくださいました。
「うちの子が、ある時から急に、汚い言葉や乱暴な言葉を言うようになって、『やめなさい』『そんな言葉、使うもんじゃないよ』と注意すればするほど、調子にのって言い続ける時期があったんです。全然やめようとしないので、こっちも開き直って、子どもの口調をまねて話してみたんです。そうしたら、子どもがゲラゲラ笑い出して、私もおかしくなって、一緒に笑い合いました。その後から、ピタリと言わなくなりました。あれって、いったい何だったんでしょうか?」

「やめなさい」と否定されているうちは、「完了感」が得られないのでしょう。いつまでもやり続けます。しかし、お母さんも一緒になって、同じような言葉で話してくれた時に、お子さんの中で、何か「共有化してもらえた」という「完了感」が持てて、落ち着いたのではないでしょうか。

頭ごなしに否定して強制するのではなく、子どもに寄り添って、ペースを合わせてみると、案外、解決が早いことがあるかもしれませんよ。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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