思春期の娘と微妙な関係になってきたら気をつけたいこと【前編】

思春期を迎えると、子どもはさまざまな悩みを抱えるようになります。そんな子どもをそっと見守ることができればよいのですが、女の子の保護者のかたは心配のあまり、過干渉になってしまい、娘との関係がこじれてしまうケースもあるようです。
そこで、思春期の娘とよい関係を築くために、保護者のかたが心得ておくべきことを、母娘問題に詳しい臨床心理士の信田さよ子先生に聞きました。

思春期は、保護者がギアをチェンジする時期

子どもが思春期を迎えたら、保護者は「子どもが自立への一歩を踏み出したのだから、子どもから手を離さなければならない時期に来たのだな」ということを意識してほしいと思います。思春期の子どもは、勉強、友だち、部活など、さまざまな悩みや葛藤をなんとか一人で乗り越えようと努力しています。保護者のかたも子育てのギアを「いつでも手助けするモード」から、「そっと見守るモード」へとチェンジする必要があるのです。しかし、子どもの自立を信じられず、いつまでも「自分が子どもの問題を解決してあげなければならない」と考え、手を出したり、口を出したりしてしまうと、子どもとの関係がこじれてしまうのです。

男の子の母親は、「干渉しすぎると大好きな息子をマザコン扱いしているようで、かえって嫌われてしまう」と考えて、勉強以外のことにはあまり干渉しないように気をつけているかたが多いようです。しかし、女の子の母親は、「娘と自分は同じ考えだ」「同性だから娘の考えはわかる」と思い込み、娘のスマホをこっそり見たり、友だち関係に口を挟んだりとプライベートなことに踏み込んでしまいがちなので、子どもとの間に大きな溝ができてしまうことがあるのです。

一人の人間として尊重して接する

思春期になると、友だちには言えるけど、保護者には言えない秘密が増えてきます。子どもが自分に何か隠しているなと思っても、必要以上に踏み込まないことが大切です。もし、子どもに隠し事があると気づいても、「どうしてお母さんに言えないの!」などと、責めるような態度を見せないようにしましょう。そうした態度をとられると、子どもはますます秘密を抱え込むようになってしまいます。どうしても気になるのでしたら、「お母さんもあなたくらいのときに、たくさん秘密があったわ。あなたの年齢ぐらいになれば、珍しいことじゃない。でも、本当に困っていることがあれば、ママにだけは話してほしいな」と、シリアスにならないように気をつけ、相談に乗る準備はできていることをそっと伝えておきましょう。本当に相談したいときは子どもから話してくれるはずです。

思春期の子どもとの対話は、SNSでのやりとりのような慎重さが必要です。SNSでのやりとりは、直接会って話すよりも誤解が生じがちなので、相手のことを思いやり丁寧な表現を心がけ、相手の言いにくいことには踏み込まないなどの配慮が必要です。子どもとの会話でも、言葉足らずになったり、踏み込みすぎたりしないように配慮をしてあげてほしいと思います。自分の子どもだから何を言っても許されると思わず、一人の人間として尊重し、言葉選びにも気をつけてほしいですね。

もし、思春期の子どもが保護者のかたに学校や友だちのことをいろいろ話してくれるのであれば、保護者のかたが日頃から子どもの話をしっかり聞いてあげているという証拠です。よい関係が築けていますから、引き続き程よい距離を置いて見守ってあげましょう。

後編では、引き続き信田先生に思春期を迎えた娘との良好な関係を築くためのコツをお聞きします。

プロフィール



臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。家族や対人関係の悩みの相談にあたる。著書に『依存症』『DVと虐待』『加害者は変われるか?』『母が重くてたまらない-墓守娘の嘆き』『さよなら、お母さんー墓守娘が決断する時』『共依存』『カウンセラーは何を見ているか』『依存症臨床論』『アディクション臨床入門』などがある。

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