遠足や移動教室での乗り物酔い対策【前編】

待ちに待った遠足や移動教室。しかし、楽しいはずの行事も、乗り物酔いをしてしまう子どもは、「酔ってしまうかも」「酔ったらみんなに迷惑をかけてしまう」と不安を抱えているかもしれません。保護者のかたも、せっかくの行事を思う存分楽しんでほしいと望んでいるのではないでしょうか。乗り物酔い対策について、目白大学耳科学研究所クリニック院長の坂田英明先生に教えてもらいました。



テクノロジーの進化によって生まれた乗り物酔い

乗り物酔いがひどくて、バスや船での移動がつらい、という人は多いもの。特に、小中学生はバランス感覚をつかさどる脳の部位が発達途中にあるため、乗り物酔いしやすくなります。また、学校行事で長距離をバスで移動する場合は、途中でバスを止めてもらうというわけにもいかず、つらい思いをしているお子さまもいらっしゃることでしょう。

実は、乗り物酔いは「動揺病」という名前がついた病気でもあります。人間をはじめとする哺乳類の身体機能は、自ら走り回ったりする時にはバランス感覚を発揮しますが、外部から受動的に与えられる上下・左右・前後の動きに関しては、十分に対応することができません。
というのも、馬車・汽車・自動車・飛行機……とテクノロジーの進化によって、さまざまな移動手段が生まれましたが、このような技術が発達してきたのは産業革命以降のこと。長い時間をかけて進化をしてきた人間の身体機能に比べて、まだまだ最近のことなのです。ある意味、乗り物酔いをするのは当然だといえるでしょう。



乗り物酔いになる原因は「揺れ」だけではない

さて、乗り物酔いの大きな原因はもちろん「揺れ」によるものです。デコボコ道や波のうねりによって乗り物が大きく揺れることで、体のバランス感覚をつかさどる内耳の一部、三半規管にある「リンパ液」が動き耳石に異常を起こすと、乗り物酔いになります。
次に、目から入ってくる情報によって酔ってしまうことがあります。たとえば、テレビや映画などを見ていて、画面がチカチカとした光を放ったり、動いた映像が流れたりした時に気分が悪くなることがあります。これも「酔い」の一種で、乗り物が揺れていない時でも、目から入る情報が強すぎると、脳が「揺れている」と判断してしまい、酔ってしまうことがあるのです。
また、いつも乗り物酔いをする人は、過去の乗り物酔いの記憶が原因で酔ってしまうことも。バスなどに乗る前に「酔ったらどうしよう」などと思い不安になると、乗り物酔いをしやすくなってしまいます。



普段からできる乗り物酔いしにくい体質づくり

乗り物酔いは3~20歳の人であれば、誰にでも起こるものです。しかし、乗り物酔いをしやすい体質のお子さまも、体質改善を図ることもできます。バランス感覚の訓練法をご紹介するので、ぜひ実践してみてください。

A 頭を振る訓練
 50cm先の動かないものを見つめながら、頭を(1)左右30°に振る (2)前後30°に振る (3)左右30°に傾ける運動を各10往復、1日2回繰り返します。



B 目を動かす訓練
 50cm先にある、30cm離れた2つの点を(1)左右(2)上下に、頭を動かさずに交互に見つめます。各10往復1日2回繰り返します。


C 体勢を変える訓練
 (1)仰向けと起き上がった状態 (2)寝返りを左右に (3)椅子に座った状態と立った状態各10往復
 1日2回繰り返します。



D 足を動かす運動
 (1)足を閉じて立つ、継ぎ足(片方の足のつま先にもう片方の足のかかとをつける)で立つ、を目を開いた状態と閉じた状態で各5~10分、1日2回繰り返します。
 (2)足踏みを目を開いた状態と閉じた状態で各50~100歩、1日2回繰り返します。



効果はすぐには表れませんが、布団の中で行える運動は朝起きた時と寝る前、それ以外の運動はお風呂に入る前など、回数と時間を決めて毎日続けることが大切です。最初のうちは、保護者のかたも一緒にやったり、声をかけてあげたりして、習慣にできるとよいですね。また、体調のすぐれない時や疲れている時はお休みさせましょう。


プロフィール

坂田英明

坂田英明

埼玉医科大学卒業。ドイツ・マグデブルク大学耳鼻咽喉科研究員、埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科を経て、現在は目白大学保健医療学部教授、目白大学耳科学研究所クリニック院長。NPO法人第8神経を考える会理事。

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