「子どもの科学」を大切にし、理科好きの子どもを育てる

理科は自然科学に興味を持つ窓です。しかし、残念ながら「理科が苦手」「理科が嫌い」と感じる子どもが少なくないのも事実です。理科好きの子どもに育てるには、家庭でどんなことを注意していったらよいのでしょうか。山梨大学教授の松森靖夫先生にお話を聞きました。

子どもは自分の論理を持っている

意外に感じるかもしれませんが、生まれながらに「理科が嫌いだ」という子どもはいません。動植物や天体、目の前の自然科学に対して、子どもはいつも「どうして?」と疑問を持っています。そして、その関心を自分なりに育てて、子どもならではの論理をつくっています。私はこれを「子どもの科学」と呼んでいます。
つまり、子どもは自然に理科に関心を持っているものなのです。

大切なのは、この「子どもの科学」を否定しないこと。いま、大人の世界で「科学の常識」とされていることはこの時代で認められているにすぎません。もしかしたら、子どもの科学のほうが「正しい」と証明される未来がくるかもしれないのです。そんなふうに考えると、頭ごなしに子どもの考えを否定はできませんよね。

子どもの好奇心をくすぐる「足場」を設ける

子どもの科学への関心を引き出していくためには、大人による仕掛けが大切です。仕掛けとは、子どもの関心を育てるための「足場」をつくることです。そういうと、特別な科学的知識を与えるような会話をしなければいけないと思うかもしれませんね。
しかし、家庭のなかで行われていることを、きちんと定義付けてあげればよいと私は思っています。具体的な例を紹介します。

(1) お手伝いのなかから、科学的思考を育てる

階段をほうきで掃除をする時、上から下に向けて掃いていきますよね。なぜかというと、重力があるためゴミはそれに従って下に落ちていくので、そのように掃除をしたほうが効率的だからです。掃除ひとつとっても、「どうして?」と考える過程を組み込むことで、科学的な関心を引き出すきかっけになるのです。

さらに、キッチンは科学の宝庫だといわれています。「じゃがいもの芽が出ている部分を食べないのはどうしてだと思う?」などと尋ね、子どもの関心を刺激していくことが大切なのです。

(2) 保護者が自然科学的な趣味や習慣を持つ

保護者が夢中になっていることに、子どもは興味を持つものです。家庭菜園などの趣味があるならば、食物を育てている姿を子どもに見せるとよいでしょう。子どもの自然科学への関心を育みながら、一緒に手を動かして楽しめるようになります。

(3) 読み物やテレビ番組を、一緒に見る

リビングのなかで、子どもの関心を育てる足場をつくることもできます。科学的なドキュメンタリー番組を一緒に見る、図鑑や「子ども新聞」などを常に子どもが手に取れるところに置き、関心の幅を広げていく……などが考えられます。

(4) 地域の自然活動にともに参加する

地域の科学館や博物館、公民館などでは自然科学に触れるイベントが催されています。それらに参加すると大人でも驚くような実験が行われており、一緒に夢中になることができます。また、地域や季節に関連したイベントを開催していることも多く、子どもの興味関心を引きやすいというメリットもあります。

子どもの思考を温める

「この子はいつも変なことばっかり言っていて」「モタモタしていて自分の考えを全然言わない」「うちの子は何にも考えていなくて」といった保護者のかたの声を耳にすることがあります。
しかし、どの子もみんな自分の頭で考えているものです。大切なのは大人が先回りせずに、子どもに「思考を温める時間」を与えることです。先回りして答えを教えたり、大人の常識を押し付けたりしてはいけません。

子どもに尋ねられたら、図鑑など調べるためのツールを示したり、「◯◯ちゃんにも聞いてみたら?」と子ども同士で話し合わせてみたりするとよいでしょう。大人でもわからないようなことであれば、一緒になって考えてみてもよいですね。こうしたことが、科学に対して、仮説を立てて検証するという思考のステップの構築につながっていくのです。

プロフィール

松森靖夫

松森靖夫

山梨大学教授。専門は科学教育。『毎日小学生新聞』などで、わかりやすく自然科学の楽しさを教えている。著書に、「理科好きの子どもをはぐくむ20の条件 先生!ぼくが理科を嫌いになったわけ知っていますか?」「小学生の素朴な疑問に答える やさしいサイエンスQ&A」(ともに東洋館出版社)などがある。

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