「反抗期がない」と悩む保護者が増加 「なくても問題がないパターンも」と専門家
誰もが経験する「反抗期」のはずが、近年、「うちの子、反抗期がないんです」といった声が聞かれるようになっている。でも、反抗期は必ずあるべきものなのだろうか? 高校教師の経験があり、現在もスクールカウンセラーとして活動している、奈良女子大学教授の伊藤美奈子先生に教えていただいた。
反抗期を、親離れ・子離れをするための「儀式」だとすると、この「儀式がない」親子関係は、「自立が遅れている」「親子関係が未熟なまま」の状態だと言えます。しかし、反抗期を、親子関係の「結び直し」作業の時期だと考えると、反抗期がなくても特に問題がないパターンがあることがわかります。
子どもが小さい時期の親子関係は、「親が育てる・守る/子どもは育てられる・守られる」という、保護者が上で子どもが下の「タテ」の関係が成立しています。しかし、子どもが肉体的・精神的に成熟するにつれて、この関係性は次第に「お互いが自立し、同等である」という「ヨコ」の関係に結び直されていきます。
ただし、思春期の子どもは、体は大きくなっても、社会的にも経済的にもまだ自立できておらず、中途半端なまま。保護者は相変わらず上にいて、完全にヨコの関係にはなれません。そこで子どもは、暴言や無視などをとおして、なんとか「親を引きずり下ろしてやろう!」と画策するのです。これが、いわゆる反抗期です。やっかいなのは、子ども自身が保護者を引きずり下ろそうと明確には自覚しておらず、ただ「親がムカつく」とか「自分のことをわかってくれない」と、モヤモヤ・イライラしてしまうところです。
こうした、タテからヨコへの「親子関係の結び直し作業の時期」が反抗期だとすると、反抗期がなくても心配がないパターンの多くは、思春期以前の段階で、親子関係がタテからヨコに結び直され、子どもが保護者の位置にまで、既にある程度「上がっている(成長している)」ことがポイントといえるでしょう。
出典:うちの子、反抗期がないんです【前編】 -ベネッセ教育情報サイト