「反抗期が難しい!」保護者の対応4つのポイントと、長引くケースの原因を専門家に聞いた

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小学校高学年から中学にかけて、急に無口になったり、イライラしたり……。成長過程の1つであることは知っていても、子どもが反抗的な態度をとってきたらどうすればいいのか、不安に感じているおうちのかたも多いのではないでしょうか。アメリカやイギリス、オランダで心理学を学び、子育て心理学が専門の佐藤めぐみ先生に、そもそも反抗期はなぜ起こるのか、保護者のかたの対応として望ましいものは何か、お話を伺いました。

反抗期への対応 4つのポイントは?

この記事のポイント

反抗期はなぜ起こるのか

佐藤先生:思春期に起こる第二次反抗期(以降「反抗期」)は、精神的な自立のために起こるものとされています。心理学者のホリングワースは「心理的離乳」という言葉を使って表していますが、子どもはこの時期に、心理的に依存していた親から離れ、一人前の人間として対等に扱われたい、と欲するようになります。

とはいえ、そうすんなり自立できるわけではないので、親から離れたいという気持ちと、まだまだ依存しているという意識の間で葛藤し、精神的な不安定さが不安や怒りとなって処理しきれず、親への反抗として現れます。
この時期は親に限らず、大人からの干渉を好まないので、先生に反抗することもあります。一方で友達が一番という気持ちが強まり、友達の影響をすごく受ける時期でもあります。

「精神的な自立」をもう少し詳しくみてみましょう。発達心理学者のエリクソンは、ライフサイクル理論で人生を8段階に分けていますが、その1つの「青年期」がちょうど思春期にあたります。8段階のステージそれぞれで達成すべき課題が設けられているのですが、青年期の課題は「自我同一性の確立」。どういうことかというと、それまでは親あっての自分や自我だったのが、この時期になると自分は何者なんだろう、という自問自答をし、独り立ちしていくうえで自分の目指す道を考えるようになります。それが見つけられると「自我が確立された」となる。いわゆる自分探し、ともいえますね。

反抗期の時期と長引く場合とは

期間は小学校高学年~中学生が多いが、長引くケースも

佐藤先生:私が受ける相談では、小学6年生から中学3年生くらいの間に、子どもの反抗について悩んでいるかたが多いです。自分探しは思春期に始まって以降ずっと続くものですが、反抗自体は中学時代がピークで、高校生になるとだんだん落ち着いていきます。通り過ぎるとびっくりするくらいケロッとする、ということもよくあります。

その一方、反抗期が長引いてしまう、ということもあります。反抗期はあってしかるべきものですが、どういう場合にひどくなりやすいかというと、本人のもともとの気質や個人差もありますが、家庭の環境に原因があることも多いです。

●よい環境:家庭での規則・ルールが明白で、親がゆるぎない態度を持ちつつも、温かく子どもを支えているケース。厳しくも温かい態度の親の場合、子どもは青年期を通して、大きな問題を起こすことはほとんどないと言われています。

●悪い環境:親がとても権威主義的、つまり厳格なルールをもって、子どもに対して温かさが欠けるケース。もしくは、あまりに甘すぎる場合も、子どもがより多くの情緒的トラブルや、行動の問題を起こしやすいと言われています。

私が今まで見てきた事例でも、後者の環境に置かれていた子は反抗期がひどくなってしまうことが多かったと言えます。それぞれ細かな経緯は違うものの、大きく分けると次の3つのパターンが多いように感じています。

甘やかしているパターン①

家庭にルールがなかったり、子ども主導で毎日が回っていたりするパターンです。おうちの中で子どもが力を握っていると、反抗期になってますますいうことを聞かなくなり、親に命令するなど、指示的な態度を取ることが多くなります。

甘やかしているパターン②

小さいころから、親が子どもの嫌がることや面倒なことを代わりにやってきたパターンです。たとえば学校の準備をすべてしてあげる、などが習慣になっていると、その子自身の力、時間管理など自分で何かを計画的に進める力が育っていません。そのため、できないとなんでも親のせいにします。思春期になり自立したいと思っても、自分にその力が備わっていないので、反抗が強く出がちです。

保護者が子どもをコントロールしているパターン

権威主義に近いのですが、子どもの「こうしたい」という思いよりも、親の思いがとても強く、親が過度に子どもを管理しているパターンです。たとえば習い事や塾、進路などすべて親が決めていたり、塾で本人の学力に見合っていないクラスに入れたり、といったことが挙げられます。
小学生のうちはなんとかこなしていても、中学は勉強が難しくなり、受験もあるなど、ただでさえ子どもに負荷がかかる時期。それまでコントロールされてきた鬱憤(うっぷん)が一気に噴き出し、「こんなになったのはお前たちのせいだ!」と突然爆発することがあります。

それぞれの家庭で反抗期の前から火種がありますが、親と子の力関係が崩れていると、反抗期がひどくなったり、長引いたりすることが多い印象です。子どもに対して、ゆるすぎず厳しすぎず、バランスの取れた態度で接することが重要といえます。

反抗期に入る前の準備が肝心

佐藤先生:反抗期がオンになってから親ができることは、残念ながら限られています。それまでどう過ごしてきたかが影響しやすいので、思春期に入る前に準備しておくことが大切です。
ポイントは、親がすべてを決めない。しかし、子どもを完全に自由にさせてはいけない、ということ。そして、子どもが自分でできることを増やしておきましょう。自立しようとするのは思春期ですが、助走という意味で、小学校のころから自立の力を促しておくことをおすすめします。

反抗期が始まったときの保護者の対応 4つのポイント

反抗期への対応4つのポイント 1.子どもがつくる距離に合わせる 2.自分の対応を自問する 3.親の自我を刷り込まない 4.自分の気晴らしを持つ

佐藤先生:—いったん反抗し始めると、何か工夫したら収まる、ということはさほど期待できません。反抗されると親も怒りがこみ上げてきますが、その場では過剰に反応しない、これが一番の対処法です。中学生は、完全に親から離れているわけではありません。まだ親の助けが必要なシーンも多くあるので、反抗されたときに「勝手にしなさい」「出ていきなさい」といった突き放す言葉をかけたり態度を取ったりすると、子どもが助けを求めにくくなるので、気を付けたい点です。
他にもいくつか心がけておきたいポイントがあります。

1.子どもがつくる距離に合わせる

子どもがつくる距離を尊重し、親が距離を決めないことが大切です。子どもが話したがらないときには踏み込まず、タイミングを見計らって聞くといったことも、子どもの距離を大切にすることにつながります。たとえばケーキを食べていて機嫌のいいときにちょっと話してくることを大事に聞く、などです。

2.自分の対応は子どもの自立につながったか、自問する

そもそも「反抗期」という名前は、外から見た状態に対してつけたネーミングです。この時期の本来のテーマは精神的に自立することなので、自分の対応が子どもの自立を促しているかどうか自問することが重要です。
過管理・過干渉を避けることが大切とお伝えしましたが、「私の今のリアクションは、子どもの自立につながったかな?」という問いをして、都度確認していくことが大切です。

3.自身の自我を刷り込まない

同性の親子の場合、わかり合えることも多いのですが、「自分がこうだったから子どもも」と自分を重ねてしまうことがあります。特に母と娘の場合に起こりやすいのですが、親子であっても別個の人間であることを意識し、親の自我を刷り込まないことが重要です。

4.一過性のものだと思い、自分の気晴らしを持つ

反抗期が来ると、それだけで頭がいっぱいになりがちですが、時間が経てば過ぎていく一過性のものです。子どもが新しい距離感を獲得し、親子関係の再構築を行う間、親も自分の時間の使い方を見直し、いずれ訪れる子どもの自立と子離れの助走を始めるのもよいでしょう。趣味を始めるなど、自分の心が穏やかになれる時間を持つことも、子どもの反抗から目線をそらす助けになります。友人やママ友、少し年上の子どもがいる人に話を聞いてもらうこともよいと思います。ひとりで抱え込み過ぎず、自分の気分を軽くすることも、反抗期の工夫として覚えておきたい点です。

子どもの反抗の出方には、無視・無口、暴言、常にイライラ、といろいろありますが、基本的にはやり返さず、見守るのが最善の対応です。ただ、暴力を振るう、非行に走るなどは、やはり行き過ぎています。この場合、家庭の中でなんとかしようと思ってもうまくいかないことが多いので、スクールカウンセラーや学校の先生、専門家に話をして、早めに対処するようにしてください。

まとめ & 実践 TIPS

悩ましい反抗期ですが、子どもが自立に向かうステップ。実は反抗期が始まるまでの親子関係が肝心なので、プレ反抗期のうちに家庭の環境を見直し、整えておくことが大切です。いざ始まったら、本人の自立を促す対応を心がけ、見守りつつも、上手にやり過ごしていきましょう。

プロフィール


佐藤めぐみ

公認心理師|オンライン育児相談室・ポジカフェを運営。専門は0~10歳のお子さまをもつご家庭向けの行動改善プログラム、育児ストレスのカウンセリング。英・レスター大学大学院修士号取得。書籍、メディアへの寄稿や監修も多数。

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