【まとめ】3年目を迎えた大学入学共通テストの傾向と対策

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実施3年目を終えた大学入学共通テストでは、「共通テストらしい」特徴のある出題が定着しつつあります。そこで今回は過去3年分の共通テストの出題を踏まえて、「共通テストらしい」特徴のある出題傾向と今後の対策について紹介していきます。

この記事のポイント

授業などの高校生の学習場面と多様な資料を扱う出題に特徴

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)では、授業や日常生活で生じた高校生の「問い」を起点に、探究活動の過程を追体験させる場面設定の出題がみられ、そこでは会話文形式が多用されていることが特徴的です。

また図やグラフ、写真などのさまざまな資料が扱われ、さらに高校生が作成したメモやノート、発表資料・スライドなども資料として扱われることも特徴的で、これらの特徴によって「共通テストらしい」出題という印象を与えているようです。

さらに問われている内容も、探究活動での「調査方法は適切か」「記録に誤りがないか」「調査結果からの予想は適切か」など、「問い」に始まり結論の考察に至るまでの過程が順を追って段階的に問われていることも「共通テストらしい」出題といえます。

このような出題から、共通テストが教科書の知識・理解だけでなく、探究活動を通じて結論を導く過程を含め、多面的な思考力を問おうとしていることがうかがえます。

  • 高校生の「問い」を起点に、探究活動の過程を追体験させる場面設定
  • さまざまな資料が扱われ、高校生のメモなども資料として扱われる
  • 探究活動の過程が順を追って問われるなど、多面的な思考力も問われる

問題のページ数・文字量が多く、情報処理力が要求される

共通テストではさまざまな資料が扱われることから、センター試験と比べて情報量・文字量が大幅に増え、情報処理力も要求されるようになりました。

このような情報量・文字量の増加は、問題の難易度への影響が考えられます。

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実際にセンター試験最終年度の問題と、共通テスト3年目の問題で、1大問あたりのページ数を比較したところ、全体的に増加傾向がみられました。

10ページ以上の大問は、センター試験の最終年度では国語(第1・2問)、倫理(第1問)のみでしたが、今年度の共通テストでは英語(第6問)、数学I・数学A(第2問)、国語(第1~3問)、政治・経済(第1問)、倫理(第4問)でみられました。

このようにページ数が増加した背景として、扱われる資料の増加に加え、会話文形式の多用による文字量の増加が考えられます。

受験生からすると、会話文形式は文章のみでの説明に比べ、より身近で具体的に感じられるかもしれません。しかし文章でなら「太郎さんは大学入試の歴史について探究活動を行った。」のように一文で示せていた場面設定が、一般的な高校生たちが自然な会話文で「問い」を立てるまでの過程を示すとなると、文章ほどには端的に表現できません。

また会話文形式では、複数の話者別に立場や意見の違いを整理したり、発言の中から解答に必要な条件・要素を見極めたりする必要もあるため、取り組みやすい反面、文字量のわりに内容の読み解きに手間がかかることがあります。

学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が重視されているため、今後の共通テストにおいても会話文形式での出題が続くと予想されます

ページ数・情報量が増え情報処理力も要求される共通テストへの対策として、過去問などを使って会話文形式への出題に慣れておく必要があります。

  • センター試験に比べ、問題のページ数が増え、情報処理力も求められる
  • 共通テストの過去問などで会話文形式の出題に慣れておく

共通テスト対策には「学びの過程の意識化」も必要に

共通テストで求められる知識・理解が、教科書レベルの重要事項であることはセンター試験から変わりありません。しかしセンター試験と比べ、共通テストは問題のページ数・情報量が増加しているため、情報処理力も併せて求められるようになりました。

また高校生の探究活動の過程を問うような「共通テストらしい」出題の対策には、会話文形式で異なる立場での意見や考えを整理したり、高校生が記録したメモやノートから考察したりするトレーニングも必要です。

実はこのような共通テストで問われている探究活動の過程は、ふだん受けている授業のなかにも存在しています。

つまりそれは、授業冒頭での教師からの発問、それを受けての生徒同士の対話、対話の結果をノートにまとめる—という流れです。

ということは、高校生自身が日々の授業に主体的に参加し、学びの過程を意識することが、「共通テストらしい」出題への対策になりうるのではないでしょうか。

  • 教科書レベルの知識・理解の定着が第一
  • 多様な資料、文章などを的確に読み解く情報処理力の向上
  • 日々の授業に主体的に参加し、「学びの過程」を意識する

まとめ & 実践 TIPS

共通テストは3年目を終えて、「共通テストらしい」出題傾向が定着しつつあります。
教科書レベルの知識・理解にとどまらず、多様な資料を読み解いたり、学習過程を日々意識したりすることが今後の共通テストの対策になると考えます。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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