文章全体を見渡す問題ができません その2[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答し、実際にアドバイスを実践した結果どうなったのか?という追跡結果もお届けします。


質問者
東京都 M・Sさん(小3女子のお母さま)
子どもの性格: マイペースなコツコツ型、どちらかといえば受身タイプ。
志望校:未定だが、本人から受験をしたいと言い出した。

第二回目の質問
欲張って教えすぎていたことに気付かされました。
第一回目の小泉先生の回答アドバイス、ありがとうございました。
ご指導いただいた二つを実践してみました。
(1)「登場人物の人間関係は?」
登場人物に丸をつけさせました。人間関係については親子、友達などと答えることができました。

(2)「何が変わったか?」
子ども一人で、文章全体を意味段落に分けていきながら正しい答えを出すことができました。
しかし、登場人物の気持ちの現れている行動から、変化を読み取ることはまだできたとは言い難い状況です。

今回、私が子どもに聞いたのは「登場人物の行動、気持ちが描かれている部分はどこか?」です。
この時に、最初の方法に戻ってしまいました。
直接的でない文章、暗喩などの場合、答えを自分で見つけることが難しかったようです。「ほくそえんだ」「ムキになった」などという感情表現から 以前と違う気持ちになったことは、なんとなくは理解していますが、高度な選択肢問題になると間違えてしまいます。

親が問いかけながら、登場人物の気持ちを追っていくと、理解はできます。理解ができるので当然選択肢問題はできますし、字数制限のない記述問題は解けます。しかし字数制限があると苦戦しています。

小泉先生の第二回目のアドバイス
「方向性を考えさせる」と「教えない」という二つの指導法

『気持ちの現れている行動から、変化を読み取ることはまだできたとは言い難い状況』というのは、「心情表現から気持ちや人間関係の変化を読み取れない」ということだと思います。こういった場合は、「方向性を考えさせる」と「教えない」という二つの指導法が効果的でしょう。

まず「方向性を考えさせる指導法」とは、「変化した気持ち」そのものズバリを求める前に、まずその方向性を確定させるものです。
たとえば「良い気持ちになったか? または悪い気持ちになったか?」というように、「○か×」のいずれかに気持ちを分類させます。お子さまの場合、『ほくそえんだ、ムキになったなどという感情表現から、以前と違う気持ちになったことはなんとなくは理解してい』るわけですから、おそらく「○か×」かはクリアできると思います。
それではお子さまとの指導のやりとりのシミュレーションを下に挙げてみましょう。

お母さん: 「どんな気持ちに変化した?」
お子さま: 「……」
お母さん: 「そんな場合は、○か×で考えるんだよね? ○かな×かな?」
お子さま: 「……、○かな?」
お母さん: 「そうだね! ○だね。最初は『ねたましい』という悪い気持ちが、『良い気持ち』に変わったんだね。それではその『良い気持ち』をもっと具体的に言うと何?(心の中で、<『かわいそう』でしょ! ガンバレ、ガンバレ>とつい応援してしまうはず……)」
お子さま: 「……」
お母さん: (ここで正解を教えるのを我慢して)「わからないかな? ほらその気持ちを表す心情表現が、ここからここまでの間にあるから探してごらん」
お子さま: (一生懸命探しているようだが)「……」
お母さん: 「もう少し絞るね。この行にある」
お子さま: 「……。△△かな?」
お母さん: 「その通り! つまりこの言葉からどういう気持ちがわかるのかな」
お子さま: 「『仕方ない』という気持ち?」
お母さん: 「そうだね、それで良いよ。もう少し正確に言うと『かわいそう』だけど、『仕方ない』でもOKでしょう!」

ということで指導は終わります。いかがでしょうか? もしお子さまから上記のように「仕方ない」という言葉が出なければ、もう少しヒントを与えても良いでしょう。お子さまが考えやすいように方向性を示しているのですが、やがて自分だけでその手順をたどり始めます。

さて、上記の会話には、実はもう一つ重要な要素が入っています。それは、「教えない」という指導方法です。
たとえばお子さまが「……」の時、正解を教えるのを我慢できずにお母さんが「『かわいそう』という気持ちだね」とか、「登場人物の行動、気持ちが描かれている部分はどこ?」(お子さま無言……)「それはね、ここだよ」(お子さまはまだ無言)「こういう言動をしているから、『かわいそう』という気持ちが読み取れるんだね」(お子さま、なるほどという顔をする)と、どんどん教えたとしましょう。お子さまは「なるほど」とわかったような顔をするので、お母さんもひと安心となります。
しかしこれでは、何も問題が解決されていない場合が多いのです。それはお母さんが解説を始めると同時に、お子さまの思考力が半分以下になると考えられるからです。つまり人の話(特に先生の解説)を聞くと安心して、考えようという気持ちが低下するのです。

特に考える力が分散しがちなお子さまや、まだ幼いお子さまは、なるべく「教えない」「解説しない」ことが重要です。上記の会話でも、正解を教えるのではなく、ヒントを出し続けることでお子さまの考える力を持続させているのがわかると思います。すぐさま解説に入って「教える」時よりも、「教えない」で考えさせる指導のほうが、確実に国語力がアップします。

お子さまにとって最高の先生とは、「すぐには教えない」で「適切なヒントを与えながら考える方向を限定してくれたり、ここだけを考えれば良いと保証したりしてくれる」人であり、しかも「考え抜いて、もう無理! という段階の直前に、やっと正解や正解の出し方を教えてくれる」人だと思います。生徒ごとに思考できる深さや時間が違いますから、その意味ではお母さんが最高の先生になり得るのです。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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