【地歴公民】3年目を迎えた大学入学共通テストの傾向と対策

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2023年1月14日・15日に3年目の大学入学共通テストが行われました。
過去2年の大学入学共通テストでは、高校生の学習過程を意識した場面設定やさまざまな資料が多く扱われました。そこで今回は3年目を迎えた地歴公民での出題傾向と特徴的なトピックスについてご紹介します。

この記事のポイント

多様な資料と高校生の学習場面を扱う出題が継続

3年目となる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の「地理歴史」と「公民」(以下、地歴公民)では過去2年と同様に、多様な資料と高校生の学習場面を扱う出題が多くみられました。

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【地歴公民】2022年1月大学入学共通テストを徹底解説 2年目を迎えた傾向と対策

過去2年の出題に対する大学入試センターの報告書によると、高等学校の教科担当教員や教育研究団体から概ね好意的な評価が得られており、今後もこのような出題が継続すると思われます。しかし一方で、読解が必要な資料や会話文の増加による科目平均点への影響も指摘されています。

そこで今回は3年目の地歴公民の出題で特徴的と思われる、高校生の「問い」を起点に探究活動を追体験させる設問構成と、平均点への影響があると思われる文章全体を「参考にしつつ」「踏まえて」考察させる出題についてご紹介します。

なお実際の問題は新聞社からの報道発表、または大学入試センターの公式サイトでご確認ください。

高校生の「問い」を起点に探究活動を追体験させる設問構成

過去2年の地歴公民では、授業などでの高校生の会話文と多様な資料を扱う出題がみられました。

たとえば世界の自然環境に関する地理の授業(2021年度第1日程:地理B第1問)や、ハワイ州との交流を持つ高校での授業(2022年度:日本史A第2問/日本史B第5問)など、これまでも授業中の高校生たちの会話から生まれた疑問や「問い」に対して、高校生たちが調べ考察する探究活動が、ストーリー仕立てで描かれていました。

今回の出題でも場面設定を高校生たちの授業中の会話とする出題がみられ、特に世界史Bではすべての大問が世界史の授業での会話から始まる構成でした。さらにそこで示された世界史の授業は、先生が歴史資料などを用いて話題を提供し、それに対して高校生たちが対話を通じて「問い」を立て、考察を深めるという展開で、保護者世代が高校で体験してきた「講義をひたすら聞く」授業とは異なるものでした。

また会話を用いた大問を中心に、高校生による「問い」を起点に、調査方法の検討から調査のまとめといった、探究活動の一連の流れを追体験させる設問構成にも特徴がみられました。

たとえば日本史Bでは高校生同士の会話から生じた「中世の京都の特徴は何か?」という「問い」をもとに、調べる方法の検討(問1)、史料の読解(問3)、模式図でのまとめ(問5)という、調査計画から調査のまとめまでを追体験させるような設問構成でした。

また現代社会でも、高校生が新聞記事で見た「子どもの貧困」をテーマに統計資料を調べ(問1)、聞き取り調査をまとめ(問2)、中間発表後に先生と対話し解決策を構想する(問3)という設問構成でした。

■高校生の「問い」を起点に探究活動を追体験させる出題例

  • 「中世の京都の特徴は何か」(日本史B:第3問)
  • 「環境問題の解決はなぜ難しいのか」(地理A:第4問)
  • 「子どもの貧困の実態やその背景」(現代社会:第5問)
  • 「SDGs(持続可能な開発目標)の意義と課題」(政治・経済:第4問)

このように教科書や先生から与えられる「問い」ではなく、学習内容を踏まえた高校生の主体的な「問い」で探究活動を追体験させる設問構成は、出題側からの新しい学習指導要領の「主体的で対話的な深い学び」への一提案とも考えられ、今後も注目していきたいポイントです。

文章全体を「参考にしつつ」「踏まえて」考察する出題に注意

地歴公民の入試問題では、大問の冒頭に設けたリード文に下線を引き、下線部に対応した設問による出題が多く、このような出題はセンター試験、共通テストでも多くみられます。センター試験の倫理ではリード文全体を読んで解答する「趣旨読解問題」が出題されていましたが、その他の科目ではリード文は下線部だけを読めば解答できる問題が多く、リード文全体を読んだうえで解答する問題はほとんどみられませんでした。

しかし2年前から実施されている共通テストでは、倫理の「趣旨読解問題」のように、リード文や資料文全体を読んで解答する出題が増加しました。このような文章全体を読んで解答する問題は、設問文で「参考にしつつ」「踏まえて」などの言い回しが使われています。

■文章全体を読む指示例

  • 「前の文章を参考にしつつ」(世界史B:第4問_問5など)
  • 「資料1・2を参考にしつつ」(世界史B:第2問_問6)
  • 「話し合いと授業の内容を踏まえて」(日本史B:第4問_問5)
  • 「42ページの会話と次の会話の文脈を踏まえて」(倫理:第1問_問8)
  • 「61ページおよび65ページの会話を踏まえて」(倫理:第3問_問8)

このような問題では、ページをめくって指定された文章(会話)を探し、さらに指定された先の文章(会話)が1ページ以上になるものや、下線部などの注目点が示されないものもあり、これらを丁寧に読み解いたうえで選択肢を吟味するのは、限られた試験時間のなかでは厳しかったと思われます。

特に世界史Bでは「前の文章を参考にしつつ」という問題が4問、その他にも「参考にしつつ」という問題も複数あり、受験生の負荷が特に大きかったと思われます。

なお2023年1月18日発表の大学入試センターの中間集計によると世界史Bの平均点は60.08点で、前年の平均点(65.83点)を下回る見通しですが、平均点低下の要因の一つとして、こうした文章全体を読んで解答する出題の影響も考えられ、今後も注目したいポイントです。

主体的な「問い」を意識し、文脈を的確につかむ対策を

共通テストでは教科書レベルの基本的な知識・理解だけでなく、多様な資料や会話文などの文章を読解する力、さらには増加した文章量に対応できる情報処理力も要求されています。

今年の世界史Bで顕著だった、文章全体を「参考にしつつ」「踏まえて」考察する出題には、キーワードの把握・読み返し・熟考を想定して【印をつけながら読む】などの工夫が、より重要になると思われます。

そして今年の共通テストで特徴的だった、探究活動を追体験させる出題には、普段から学習した内容を日常の生活場面に関連付けて自分ごととしてとらえ、そこで生じた疑問をもとに「問い」を立て探究するという学習体験が有利に働くと思われます。

とはいうものの、日常の生活場面で「問い」を立てること自体、中高生にとって難しいかもしれません。そこで「教科書での問い」を参考にすることをおすすめします。

現在の中学校の教科書や高校の新科目「歴史総合」「公共」などの教科書では、誌面の見開きごとに「問い」とそれに対する説明・視点などが提示されています。こうした教科書で示される「問い」を参考に、日常の生活場面に関連付けて自分ごととしてとらえ「問い」を意識する習慣は、共通テストで出題される会話文の文脈理解に役立つと思われます。

  • 会話文などの文章量増加に対し、情報処理力の向上に努める
  • 教科書誌面の「問い」を参考に、日常の生活場面に関連付ける習慣を

まとめ & 実践 TIPS

多様な資料と高校生の学習過程を場面設定とする出題は、今後も継続すると思われます。

教科書の重要事項をおさえつつ、増加傾向にある資料や会話文の情報量に対応できるトレーニングも必要ですが、中学・高校の教科書誌面にある「問い」を意識した学習も今後の対策になりうるでしょう。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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