【理科①・理科②】3年目を迎えた大学入学共通テストの傾向と対策
- 大学受験
先日、3年目の「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が実施されました。
「理科①・理科②」について、どのような問題が出されたのか、どのような特徴だったのかなどの分析と次年度以降の共通テストに向けた対策をお伝えしていきます。
身近な事柄や実験の出題が特徴的で、会話形式や図・グラフの読み取りも多い
まずは、理科全科目に共通してみられる傾向についてお伝えします。
身近な事柄・日常生活や実験、探究活動を扱った出題が特徴的でした。
たとえば、以下のようなテーマの問題が出されました。
- 物理基礎:風力発電についての探究活動(第3問)
- 化学基礎:しょうゆに含まれる塩化ナトリウムの量を分析する実験(第2問)
- 生物基礎:マウスにウイルスを感染させたときの免疫反応についての実験(第2問B)
- 物理:アルミカップの落下運動についての実験(第2問)
また、会話形式の問題や、説明文・図・グラフなどを正確に読み取って思考しなければいけない問題が多かったのも特徴です。
たとえば、以下のような問題がありました。
- 地学基礎:天体についての高校生と研究員の会話文(第3問)
- 物理:物理の授業でのコンデンサーに関する実験の会話文(第4問)
- 化学:結晶構造について図や問題文から読み取る問題(第1問問4)
- 生物:実験の内容を正確に読み取り、結果と問題文の内容を合わせて思考する問題(第1問)
引き続き、次年度以降もこのような傾向が継続すると考えられます。
以下、科目ごとの特徴をお伝えしていきます。
理科①(物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎)の分析
【物理基礎】風力発電を題材として、日常を意識した出題がみられた
第3問では、風力発電についての探究活動を題材に、発電する電力量や送電、変圧器について出題されました。
また、第2問では、水平投射の実験から、水平方向・鉛直方向それぞれの運動について問われました。
単に計算する問題だけでなく、グラフや文章選択の問題もありました。
【化学基礎】基本的な理解を問う問題を中心に、実験考察問題も出題
第1問は、昨年の共通テストと同様の小問集合形式で、化学基礎の範囲から幅広く出題されました。
第2問は、しょうゆに含まれる塩化ナトリウムの量を分析する実験を題材とした問題が出題されました。
問題文や表・グラフを正確に読み解いて、実験操作や実験結果を考察し、適切に計算処理する力が求められました。
【生物基礎】知識を活用し、データや資料を正しく解釈する力が問われた
問われる知識は基本的なものでしたが、生物基礎では見慣れない、目新しい題材からの出題や、分野融合型の問題も出されました。
データや資料を読み取り、情報を正しく解釈したり、知識を活用して論理的に考察したり、多様な科学的思考力が求められました。
【地学基礎】探究活動に関する問題は引き続き多く見られた
エラトステネスの方法を使って地球の全周の長さを測る問題や、地層を見て堆積環境を推定する問題、天体写真を撮影する高校生と研究員の会話文をもとにした問題など、探究活動に関する問題が多く出されました。
問題文から必要な情報を読み取る読解力や、図と文章を合わせて答えを導く思考力や判断力が問われました。
理科②(物理・化学・生物・地学)の分析
【物理】アルミカップを用いた空気の抵抗力に関する実験が出題
アルミカップの落下運動の実験を題材として、実験結果が予想と異なると判断できる根拠や実験結果を考察するためのグラフについて問われました。
また、コンデンサーの電気容量を求める実験データから、より正確な電気容量を推定するための解析をする問題が出されました。
物理の公式や法則をただ暗記するだけでなく、きちんと理解しているかが問われました。
【化学】読解が必要な素材が多く扱われ、思考力や計算力を問う出題
昨年の共通テストに続き、見慣れない実験をテーマにした問題や、グラフ・図・表から必要な情報を読み取って判断するような、読解力および思考力を要する問題が多く出題されました。
また、複数のステップで考える計算問題や、与えられた方眼紙を用いてグラフを作図して答えを導く問題が出題され、素早い計算処理力も求められました。
【生物】生命現象の多面的な理解と複数の情報を処理する力が求められ、昨年より難化
複数の大問で分野融合問題が出題され、生命現象の多面的な理解が問われました。
リード文や設問文の内容を解釈する読解力や、実験や図表などの複数の情報を処理する力が求められました。
問題の把握に時間がかかる出題が多く、限られた時間で複数の情報を整理し、合理的に判断する必要があり、昨年より難化しました。
【地学】グラフから数値を読み取り、考察する問題が多く出された
恒星の見かけの等級と絶対等級を表した図を見て恒星までの距離の違いを読み取ったり、地球表面の高度分布を表した図から陸地の割合を計算したりといった、グラフ内の数値をもとに考察する問題が出されました。
例年どおり、地学基礎範囲の知識で解答できる問題も多く出されました。
次年度以降に向けて、どのような対策が必要か?
はじめにお伝えした通り、今後も共通テストの特徴は「身近な事柄・日常生活や実験、探究活動についての出題」「会話形式の問題や、説明文・図・グラフなどを正確に読み取って思考する問題」になると考えられます。
読み解く会話文や説明文、図、グラフなどの情報量が多く、共通テスト本番ではスピードも求められますが、とはいえ、土台となるのは教科書の基礎知識になりますから、まずは、教科書の内容を理解することから始めてください。
知識がなければ、応用して思考していくことはできません。
そのうえで、教科書の内容と関連付けられる日常生活の事柄・現象について考えること、学校での実験に積極的に参加して、結果から考えられることを言葉にまとめてみたり仮説と合っているかを検証したりすることが大切です。
また、問題文の長い共通テスト形式の問題演習を繰り返していくことで、読解力とスピードを身に付けることができます。
- 〇 まずは教科書の内容をきちんと理解すること
- 〇 日常の現象を教科書の内容と関連付けること
- 〇 実験に参加し、結果の考察を言葉でまとめること
まとめ & 実践 TIPS
最後に、学習するにあたって一番大切なことは、「興味を持つこと」だと考えます。
日常生活にあるものに対して、「なぜそうなんだろう」「どうしてこうなるんだろう」と考えることで、今学んでいることが関連付けられて、理科の学習がより身近に感じられるはずです。
ぜひ、学校での探究活動だけでなく、ご家庭でのさまざまな経験・体験を通して、理科の学習をより身近なものにしてもらえればと思います。
株式会社プランディット 編集事業部 理科課
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの理科の教材編集を担当。
- 大学受験