やっかいな苦手意識、「苦手」にどう取り組む? [中学受験 5年生]
5年生になると、特定の教科に苦手意識を持つ子どもも増えてきます。そこで、不得意な教科や単元の取り組み方について取り上げます。
問題は適性や能力より「苦手意識」
苦手意識はやっかいなものです。「この教科は苦手だ」「この単元はわからない」と思い込んだ瞬間、頭も手も止まってしまう。自分で自分にブレーキをかけている状態です。
お子さまに「苦手」がある場合、その教科に対する能力や適性が低いと考える前に、まず苦手意識を取り除くよう心がけてください。そのための方法をいくつか紹介します。
枝葉を省いて負担感を減らす
基礎・基本のみをゆっくり教えて、枝葉の部分は省きます。これだけでいいよ、と保護者のかたに承認してもらえれば子どもの負担感は格段に軽くなります。苦手だからと学習量を増やすのは、嫌いな食べ物を無理やり食べさせられるようなもので、ますます嫌いになってしまいます。
問題を「分解」して原因を突き止める
5年生になると、複数の単元にまたがる問題が増えるため、苦手意識が生まれやすくなります。問題を解くために必要な要素を分解し、どこまでがわかっていて、どこがあやふやだからつまずいたのかを明らかにしてあげましょう。問題の所在がわかれば、克服はやさしくなります。
なお、入試問題は「間違わせる」ようにできていますから、子どもが間違うのは当然のこと。間違いを叱るのは、罠(わな)を仕掛けておいて、はまった人を嘲笑するようなものです。反対に「よくそこで間違えたね」とほめてあげるくらいがいいのです。そして、次は同じ罠にはまらないようにする方法を、印象深く教えてあげてください。
リアルなものに置き換えて学ぶ
算数の「数」や図形、立体の問題、理科の物理分野などは、理屈が実感として腑に落ちないため苦手になるケースがよくあります。こういう場合は、ぜひリアルなものを使って学んでください。数の問題に強くなれる教具もありますし、平面図形なら折り紙、立体なら模型や粘土などを使ってもよいですね。物理分野の原理・原則には、走り方によって出るスピードが違う、笛は短いほうが高い音が出るなど、遊びやスポーツ、習い事から実感できることも多々あります。子どもは紙の上で学ぶより、実体験から学ぶほうが得意ですし、そのほうがよりしっかりと身に付きます。
「受け身」の状態から抜け出すには
「指し手感覚」と「コマ感覚」という心理学の言葉があります。自分が将棋の「指し手」であり、ゲームを自分で動かしているという感覚があればモチベーションは上がりますが、自分は誰かから動かされるだけの「コマ」だと感じていると、やる気はまったく起きません。これは勉強も同じで、「嫌いな勉強を無理やりさせられている」という受け身の状態だと、苦手意識はますます募ってしまいます。
受け身の感覚から抜け出すために、あえて塾で難易度の低いクラスに入れるのもひとつの方法です。「自分は意外とできる」という自信が生まれれば、「もっとできるようになるにはどうしたらいいか」というふうに、指し手感覚へのギアチェンジがしやすくなります。
「苦手」の発見は「得意」の発見でもある
得意・不得意は誰にでもあります。たとえば、言葉で伝えるのは苦手だけれど、直感力に優れていたり、その反対だったり。苦手は「別のことが得意」だという証であり、決して悪いことではありません。ただし、極端な苦手教科があると入試では不利ですから、食わず嫌いにさせることだけは避けたいですね。
自分が主人公になれる場をひとつでも持っていれば「苦手があってもへっちゃら」。そんな自己肯定感があれば、つまずくことがあっても乗り越えられるものです。苦手は得意の裏返しととらえ、お子さまの自己肯定感を大切にしてあげてください。
(筆者:森上展安)