2017/02/07
[第3回] 生徒同士が話し合い、教え合う「対話を通した学び」で教科学力と生徒自身が学び取る力を、共に育む ~東京都立国立(くにたち)高校3年生「生物」での実践 [5/5]
5.生徒の成長と今後の展望
「対話を通した学び」を、ほかの学びにもいかに広げていくか
生徒同士での「対話を通した学び」が活発になると、教員への質問が減っていく。そして、議論の内容が、生徒同士では解決が難しい、オープンエンドの深い内容になっていくという。今回の授業では、定期考査の問題の復習から発展して、「個人の持つ遺伝子は同じはずなのに、検査会社によって結果が違うのはなぜか」と議論しているグループがあった。
背景となる考えを多面的に聞き、学びを深める
さらに、復習中にある生徒が先生の採点に疑問を持ち、調べ、グループで確認し、先生に「自分の答えが合っている」と主張する一幕もあった。実際、生徒の解答が正解だったのだが、そのように、先生だからといってすべてをうのみにせずに、批判的思考を働かせ、対話し、主張すべきことははっきり伝える姿が見られた。
生徒自身もこの「対話を通した学び」の効果を感じており、「一方的に話を聞く形式よりも、『対話を通した学び』の方がその時の理解を深め印象に残る度合いが高く、力がつく」「みんなと話し合うと、深く考えられて楽しい」と口をそろえる。また、「生物は分からないことが楽しい」という、自ら探究することを楽しむ学習観やマインドも醸成されてきている。ただ、それをほかの教科の学習などでも行おうとする意識にならないことが「もったいないですね」と、大野先生は言う。
「生徒は、『対話を通した学び』は生物の授業形態であって、他教科でやる形態ではないと思う傾向にあります。そうではなく、学んだり、課題解決する機会全てで、同じように疑問点を出し合って話し合えば、いろいろな意見が出てきて、解決に導けるのではないかと伝えています」(大野先生)「対話を通した学び」によって、物事を批判的に考える力、みんなと意見を出し合って解決に導く力、自分の考えを伝える力などはついている。生物以外の学びの場でも、徐々に対話をしながら課題解決する姿も見られるようになった。大野先生は、これからも授業改善を行い、生徒の可能性を広げることに取り組みを深めていくことを目指す。
国立高校の大野先生の取り組みは、研究レポートとしてベネッセ教育総合研究所「アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究/調査・研究データ」にてご報告しています。こちらもご参考いただき、授業づくりの参考にしていただけますと幸いです。