【5年生】 算数の伸び悩み、どう対処する? [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第7回]

算数の伸び悩み、どう対処する?

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
国語の上達についてお伝えした前回に続き、今回は、5年生によく見られる「算数の伸び悩み」対策について取り上げます。



複合問題は分解して「荷物を下ろす」工夫を

第4回「『小5ギャップ』を乗り越える」でも軽くふれましたが、5年生のこの時期、「算数の成績が伸びない」ことに悩むお子さまが増えてきます。その理由は、塾で取り組む問題に、2つ以上の単元の理解が必要な「複合問題」が増えてくるから。一つひとつの単元がきちんと理解できていないと、「複雑骨折」になってしまうわけです。

ですから、保護者のかたは、お子さまが「どこまでできているか」に注目しながら、誤答解説をしてあげてください。「ここまではできているよ、立派だね」「あとこれだけやれば、できるようになるよ」というふうに、できている要素とできなかった要素を細分化して、負担感を減らすと同時に、できた部分をほめて、自己肯定感を増やしてあげることが大切です。背負っていた荷物が軽くなり、ほめられて元気が出れば、すたすた歩いて行けますよね。逆に、「これもできてない」「あれもわかってない」とマイナスの面ばかり強調すると、子どもに不必要な重荷を背負わせることになってしまいます。



割合や単位の計算は「実感」を基礎に

また、5年生で習う、苦手になりやすい単元は、「割合」と「単位量あたりの大きさ」です。「割合」の概念は実感としてつかみにくいので、わり算・かけ算の基礎と共に、面積図や円グラフの図など、図を見ながら、実感を持って解く習慣を付けるとよいでしょう。

「単位」の計算も、ぜひ実物を使って体感させながら、一緒に取り組んであげてください。たとえば、「1kmとはこのくらいの距離」「時速50kmとはこのくらいの速さ」とか、実際に自動車で走ってあげながら、「学校まで時速60kmで走ったら何分で着くかな?」とクイズを出してあげる。あるいは、一緒にお料理をしながら「大さじ1杯は15cc、じゃあ1lは大さじ何杯?」などと聞いてみる。生活の中には算数のヒントがたくさん転がっています。数学的な概念や数量を実感としてつかめることが算数の基礎です。基礎にこの実感があると、間違いも減ってきますし、応用力も付きやすくなります。



応用問題は「寝かせる」勇気を!

苦手になりやすい難単元は特に、基礎だけに集中させてください。「一行問題」と呼ばれる、基礎的な文章題ができれば十分です。一行問題なら目をつぶっていても解けるほど、基礎に習熟させることが大切です。

各単元の最後には、必ず複雑な応用問題が出ますが、それははっきりいって、現時点ではできなくてもかまいません。「基礎が大切。基礎ができれば大丈夫だよ」とくり返し言ってあげましょう。実はここが、保護者の、かたのがまんのしどころなのです。「応用問題ができないと、みんなに置いていかれるのではないか」という不安から、応用問題ばかりに取り組ませるのは逆効果です。塾などのカリキュラムでは、数か月後にまた同じ単元に取り組むことが多いので、応用問題はその時まで寝かせておくのがいいのです。その時には、子どもたちの頭も少し大人になっていますし、いったん基礎をしっかりと理解していれば、脳のシナプスもつながりやすくなりますから、応用問題に当たっても「ああ、あのことを言ってるんだな」と勘が働くようになります。
不思議なことに、基礎がしっかりしていれば、ある段階でふっと応用問題もできるようになるんですね。保護者のかたはぜひ、いきなりお子さまが何もかもできるようになることを望まずに、「応用問題は寝かせる」勇気を持ってください。



基礎がしっかりしていると、その後の成長は急カーブに

なお、お子さまが算数を得意になって、応用問題をどんどん解き始めたら、「すごいねえ」「私にはできないわ」などと、上手に乗せてあげてください。応用問題は基礎の内容に少し上乗せしたり、ひねりを入れたりしている部分がある。そこを何とか越えたいと、悔しがったり、おもしろがったりし始めたら、しめたものです。ただし、応用問題に含まれている基礎の部分に理解が足りなかったら、「ここは基礎だよ」と指摘してあげましょう。そして、「できるはず」「大丈夫」という期待感をにじませてください。目をかけないと、子どもたちは伸びていきません。
基礎を中心にやっている間は、成績は目覚ましい伸びを示さないと思いますが、現時点では焦らずに基礎づくりに取り組んでおきましょう。子どもの学力は、比例のグラフのように直線的に伸びるとは限りません。しかし、基礎がしっかりしていると、2学期以降、急カーブを描くように伸びていくケースが多いのです。

次回は、この時期の6年生に特に必要な、苦手教科・苦手単元の「棚上げ・棚卸し法」について取り上げます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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