模擬試験の上手な役立て方(1)成績表・答案の見方とアドバイスの仕方 [高校受験]
■模試の役割は、合格可能性の判定だけではない
模擬試験には、大きく分けて二つの役割があります。
(1)苦手な教科・単元、答案作成上のウイークポイントを発見する
(2)志望校の合格可能性を探る
模試というと、(2)の合格可能性ばかりに注目しがちですが、9月・10月の段階で重要なのはむしろ(1)です。苦手の克服にはもちろん時間がかかりますし、問題の読み間違い、単位の付け忘れといった答案作成上のミスには一人ひとり癖があり、入試直前に気付いてもすぐには直せません。
しかし、合格可能性は、まだまだこれから伸ばすことができます。模擬試験は、弱点を効率よく見つけて補強し、志望校までの距離を縮めるのに最適のツールです。受けっ放しはもったいないので、お子さんと一緒にチェックし、答案や成績表の隅々まで活用してください。
■模試の成績表チェックの前に「ひと呼吸」おく
とはいえ、模試の成績表を見て、結果がよくない場合には「このままではどこにも受からないのでは……」と不安になり、つい感情のままに子どもを叱ってしまうというのはよくあることです。
よく講演会でもお話しするのですが、模試の成績表が返ってきたら、その場でお子さまに何か言うのは、感情がそのまま出てしまいがちですからやめたほうがいいですね。模擬試験はあくまで模擬試験、改善点を見つけてお子さまの学力を伸ばすための道具と割りきることが大切です。コーヒーを一杯飲むなりしてひと呼吸おき、子どもの学力を伸ばすにはどうアドバイスすればよいか、冷静にポイントを整理してください。
■成績表・答案の見方とアドバイスのしかた
●正答率の高い問題を落としていないかチェック
成績表には、小問ごとの正答率が示されています。正答率が80%以上の問題を落としていないかを注意して見てください。逆に正答率が20%以下の問題は、できなくても問題はありません。
正答率の高い問題を落としている場合、その単元が苦手で理解不足なのか、ケアレスミスによる減点なのかを見極める必要があります。苦手なら、教科書レベルに戻って基礎から復習が必要かもしれません。受験直前になると基礎に戻る余裕はなくなってきますから、正答率の高い問題の苦手をなくすことは、9月・10月の最優先事項です。正答率80%以上の問題がミスなくできるようになれば、合格可能性は大きく広がります。
受験生としては、「基礎に戻るのは時間の無駄」に思えて、どう対策したらいいかわからないまま時間が過ぎてしまう場合がありますので、単に「この単元をやっておきなさい」ではなく、何の教材を使って対策をすべきかまで、お子さまと話し合うとよいでしょう。
●答案作成上のミスをチェック
設問の読み間違い、記述問題の字数のミス(規定字数の8割以上が原則。「80字以内」なら64字以上書いていないと減点)、理由を問われているのに答えの文末が「ため」「から」などになっていないこと、あるいは単位やピリオドの付け忘れや、漢字のとめ・はね・はらいなど、どこで減点されているかもチェックしましょう。
学習の内容はほぼ理解できているのに、このようなミスで減点されるのはとてももったいないことです。前述のとおり、ミスには自分の癖が出ますので、時間をかけて意識的に直していくことが必要です。各教科で答案作成上のミスをなくすと、偏差値5くらいは比較的たやすく上がることも伝えておくとよいでしょう。
なお、近年の模試はよく工夫して作られており、成績表に正答率から見た取り組むべき単元の優先順位や、時間配分の目安まで示してくれていたり、解説冊子には各地域の入試制度に関する記事が載っていたりします。子どもたちはなかなかそういう細かなところまでは見ませんので、保護者のかたはぜひこれらの記事・データを活用し、今後の受験勉強の指針となるよう、的確なアドバイスをしてあげてください。