筆跡鑑定人ってどんな職業? この職業についた理由
文字の筆跡から書いた人物を特定する筆跡鑑定人。この仕事はどのようにしてなるものなのか。プロの鑑定人であり、筆跡鑑定人協会・会長の根本美希子さんに仕事をはじめたきっかけについてお話を伺いました。
変わったものが好きで、勉強をはじめた
根本さんが筆跡鑑定人になったそもそものきっかけは、文字の書き方で性格傾向を見る「筆跡心理学」の勉強をはじめたことでした。以前から変わったものが好きで、「人の知らないことを知りたい」と思っていたときに筆跡心理学を知り学びはじめたのだとか。当時は、生命保険会社の営業事務として働いていましたが、筆跡の勉強をスタートしてから仕事の契約書に記入されているお客さまの文字が気になるようになったそうです。
「たとえば、漢字を書くときに、文字の『偏(へん)』と『つくり』の間が広い人は、社交的な性格であることが多いので、最初からフレンドリーに話しても抵抗感を持たれることはあまりありません。逆にそれが狭い人は、わりと警戒心が強い。むやみに時間を取られたり、邪魔をされたりしたくないと思っています。このようなことがわかるようになっていったことで、お客さまによって対応を微妙に変えるなど、実際に仕事に使えて、非常に役に立ちました」と根本さん。
結婚を機に筆跡鑑定の道へ
根本さんは、もっと筆跡心理学を深く学ぼうと進んだ学校で、根本さんは講師をしていたご主人と出会います。やがて結婚し、ご主人の手がけていた筆跡鑑定を手伝いながら、少しずつその世界へと足を踏み入れていきました。2014年にご主人が他界。その後を継いで公に筆跡鑑定人を名乗ることになったのです。
「やるしかない」と集中することで楽しくなっていった
「なんだろう、これは」という興味から筆跡心理学を学びはじめた根本さん。ただ当初は、「誰かが嘘をついていること」を前提に行われることの多い筆跡鑑定の仕事を、やりたいとは思えなかったそう。結婚後も、おもに筆跡による性格診断事業を担当していました。鑑定人となったのは、ご主人が亡くなり、後を継ぐしかない状況にあったから。しかし、覚悟を決めて、実際に仕事に取り組んでみると、意識が変わっていったのです。
その変化について根本さんはこう振り返ります。「『やらないともう後がない』状況で集中してやっているうちに、楽しくなってきたんです。だから、やってみなければわからないし、遠回りだと思っていたことが実は近道な場合もある、というのが本当だったのだとわかりました」。
決してやりたいことではなかった筆跡鑑定。しかし、真剣にならざるをえない状況で懸命に取り組んだことで、根本さんにとってやりがいのある職業になっていったのです。