脚色しすぎた解答を書いてしまうため、不正解になってしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

国語の問題で、脚色しすぎた解答を書いてしまうため不正解になってしまいます。どのように指導すると改善し正解ができるようになるでしょうか?

相談者:小3女子(大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま



【回答】

脚色する力を否定することなく、客観的な視点も持てるような練習をする


■2つの視点を必要に応じてバランスよく

お子さまはまだ小学3年生なので、客観的にものを見ることができない、あるいはよくわからないのだと思います。あるいは、性格的に大ざっぱで感情的なお子さまなので、想像力が豊かすぎるのでしょうか。脚色というレベルまでいっているのであれば、ある種の才能さえも感じさせます。しかし、試験問題を解く時には、本文を根拠にした客観的な思考が必要になります。やはり主観的・客観的という2つの視点を、必要に応じてバランスよく持つことが大切なのです。そのためには、客観的なものの見方とか、論理的な考え方などをそろそろ教えるのもよいかもしれません。


■写真や絵を客観的に説明させる

客観的なものの見方の練習には、人や風景が写っている写真か絵を用意して、それを客観的に説明させるのが効果的です。たとえば、女の子とそのお母さんが手をつないで、桜が舞い散る午後の道を歩いている写真があるとします。二人とも楽しそうにニコニコ笑っています。女の子は背中に新品のランドセルを背負っているし、2人ともよそ行きのワンピース姿。桜の時期ということからも、入学式からの帰りなのかもしれません。ということは、この写真はお父さんが前から写したものでしょうか。これから3人で、何かおいしいものでも食べに行くのかもしれません。

さて、こうした写真の見方は言うまでもなく主観的なものです。写真に写っていないお父さんまでも想像しているのですから、脚色しすぎているといわれてもしかたないでしょう。それでは、この写真を客観的に説明してみると次のような違いが出てきます。まず、この2人は「女の子と大人の女性」であって親子とは断言できません。また、「笑っている」という描写はよいでしょうが、「楽しそうに」はあくまで主観的なものです。さらに、着ているものがワンピースなのはよいとしても、よそ行きかどうかは断定しづらいところです。ましてや、新品のランドセル、桜が舞い散っているなどから「入学式」と断定することはできないでしょう。もちろん、写真が「お父さんが前から写したもの」などは論外です。このように客観的に物事を判断するということは、何かとても味気なくなってしまうようですが、こうした練習を通してどこまでが客観的でどこまでが主観的なのか、その違いを意識させることが重要なのだと思います。


■根拠を持って登場人物の心情をとらえる練習も必要

ただし、物語文の心情をとらえる時には、あまりに客観的になりすぎるのも問題です。そこには、作者と読者の暗黙の了解があるからです。たとえば、男の子と話しをした女の子が頬を染めたなら単に「顔が赤くなった」ではなく、やはり恥ずかしい気持ちがあることをとらえなければならないし、その他の場面から、その女の子がその男の子に好意があることを理解する必要があるかもしれません。ということで、最初の客観的な練習が終わったら、今度は根拠を持って登場人物の心情をとらえる練習が必要になります。

練習には本よりも国語の問題文がよいと思います。なぜなら、本の場合は根拠を持って判断しにくい場面があるからです。その点、問題文になっている文章は、心情がはっきりしている箇所が問いになっているのが一般的ですから、根拠を持って心情をとらえることができると思います。


■客観的・主観的視点を時と場合によって的確に持てるようにする

客観的に絵や写真を描写したり、説明的文章を読んだりする。入試問題などの物語文を読み、根拠を持って問いに答える。さらに、読書では物語を楽しみ、ある場面では主観的に登場人物に感情移入してみる。このように客観的・主観的視点を時と場合によって的確に持てるようになることは、豊かに感じ、理解し、表現するために必要だと思います。くり返しになりますが、脚色する力も重要な能力のひとつです。それを否定することなく、それに客観的な視点が加えられるような練習をされるとよいと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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