問われていることにきちんと解答できていない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:論理的なタイプ)のお母さま


質問

全般的によくできますが、特に記述で問題文に書かれていること以上というか、自分で想像した内容まで書いてしまうことがあったり、自分の印象に強く残った点を強調しすぎたりすることがあります。問題文はよく理解していると思うのですが、自分の考えを入れて解答してしまい、問われていることにきちんと解答できていない感じです。今の時点では、あまり本人に指摘していませんが、もうすぐ6年生になるので、そろそろ問われていることに答える技術を教えたいと思っています。どのようにコーチングしたら良いのか教えてほしいです。


小泉先生のアドバイス

シンプルに考え、「答えの中心」や「文末」を意識しながら答案を仕上げていく。

「問われていることに答えていない答案」はかなり多く見受けられます。答えるべき方向性がやや違う答案もあれば、「言いたいことはわかるけど……」といったものもあります。いずれにしても、考え方や目の付けどころが間違っていない場合は、≪非常に惜しい答案≫と言えるでしょう。このような残念な答案が多い生徒には、小泉国語教室では次のように指導していきます。

まず、設問を音読させ、大切な箇所に線を引かせます。大切な箇所とは、「目的」と「条件」です。たとえば、「傍線部(2)『涙が出てきた』とありますが、『涙が出てきた』のはなぜですか。25字以内で説明しなさい。」とあれば、「『涙が出てきた』のはなぜですか」に答えることが目的であり、「25字以内」が条件です。声に出して読ませたり、問いの大切な箇所に線を引かせたりすることで、何が問われているのかをはっきりさせます。

次に、「記述の書き方の手順」に従って、答案の部品を集めていきます。記述問題の答案は、基本的には次のようになっていますから、「文末」→「答えの中心」→「理由」→「相手」の順で考えていくことになります。


構造:「相手」+「理由」+「答えの中心」+「文末」
 例)お母さんに/ひどく叱られて/とても悔しかった/から。


それぞれの部品を集める時に大切なことは、できるだけシンプルに考えることです。たとえば「答えの中心」を考える時は、「とても悔しかった」だけに的を絞るべきだということです。上の例は非常に単純ですが、実際の問題の場合はもっと複雑なはずです。「とても悔しかった」をより正確に説明しようとすると、たとえば「自分は悪くないのに、お母さんにひどく叱られて……、しかも、詳しい理由も聞かずに……、さらに、ほかの人が大勢いるのに……」などなど、どんどん範囲が広がってしまいます。お子さまのように「自分の印象に強く残った点を強調しすぎたりする」と、さらに広がって、何が問われていたのか忘れてしまったり、本文にないのに想像して余計なことを書いたりしかねません。大切な箇所が抜け落ちないためにも、極力シンプルに、できれば「ひと言」で言えるように考えると良いでしょう。

また、部品を集めてこれらを組み立て、答案を作る時にも大切なことがあります。それは、「答えの中心」や「文末」を常に意識して書いていくということです。生徒たちには、「団子のくし刺し」を例にして説明しています。たとえば、4つの部品を4つの団子と考えると、まずくしに刺すのは「相手」や「理由」です。しかし、それらを懸命に刺していると(つまり書いていると)、ついつい「答えの中心」や「文末」という下の団子を忘れてしまい、上手に刺せずに横にまがってしまうということです(下図参照)。上からまっすぐ刺すためには(つまり、問いに答えている答案を作るには)、下の団子を常に意識して刺すことが大切です。つまり、「答えの中心」や「文末」を意識しながら、それに向かうように答案を仕上げていくということです。


上手に刺さっている団子

問いに答えている

上手に刺さっていない団子

問いに答えていない



答案を仕上げたら、最後に確認をさせます。問いの「目的」の箇所を再度読んで、答案の「答えの中心」の部分とのみ突き合わせます。今回の場合であれば、「『涙が出てきた』のはなぜですか」→「とても悔しかった(から)。」となりますが、うまく対応できているので問いに上手に答えていることになります。もちろん、答案全体の構造や言い回しも大切ですが、何よりも問われていることに答えていなければ、いかなる名文でも点数はあげられません。文章は多少ヘタクソでも、これらの手順をこなすことでまずは点数がより多くもらえる答案を心がけるように指導していくと良いと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A