息子を志望校に合格させたお父さまが家庭でできる読解問題の作り方を伝授
志望校の適性検査に合った文字数でコラム要約のトレーニング
お手製の問題集とは別に、新聞のコラムの要約も続けられたとか。どんな点に注意されましたか?
朝日新聞の「天声人語」と日本経済新聞の「春秋」を読んで、どちらか1つ選んで毎日ノートに200字以内に要約するトレーニングを、1年間くらいやりました。気をつけたポイントは文字数です。長男が受けた年の九段中等教育学校の適性検査では、記述式の問題は「200文字以内で書くように」という指示がありました。そこで、1年後も変わらないだろうと予想して次男には200字以内でまとめさせました。万が一、本番の適性検査で400字で書くことを求められても、200字で訓練していれば、字数を増やすことは難しくありません。しかし400字で訓練しているものを200字に削るのはかなり大変です。ですから、お子さんに要約をやらせる場合は、志望校で過去に出た記述問題の文字数を確認し、それに合ったトレーニングをすべきだと思います。
次男の要約は、最初はひどいものでした。5行くらいしか書けず、内容も要点をつかめないうえ、1時間もかかっていました。しかしこれを毎日続けてひと月たつと、変化があらわれました。要領を心得てきて、文章中の大事なポイントをつかめるようになり、受検直前には10分でまとめられるまでに力がついていました。また、要約と一緒にコラムにタイトルをつけさせたのですが、これも徐々にコツをつかめるようになったようです。
右は要約を始めたばかりのもの、左はコツをつかんできてからのもの。文字数が数えやすいように、途中から使用するノートを変えたそうです。
進研ゼミの公立中高一貫校受検対策用コースを受講されたそうですが、どのように活用されたのですか?
最初は「息子にはちょっと物足りないかな」と思ったのですが、テキストどおりにやっていくとちゃんと作文が書けるようになる、非常によくできた教材でした。息子も最終的にはしっかりした作文が書けるようになりましたから、いいトレーニングになったと思います。特に作文を書き慣れない子や、作文アレルギーの子にはとてもいいテキストだと思いましたね。
『塾不要 親子で挑んだ公立中高一貫校受験』を書かれたきっかけは?
たまたま次男の受検が終わったあと、出版社の友人と飲んでいた席で、子どもの話になりましてね。「公立中高一貫校を知っている? こういう適性検査があって、私も問題をつくって息子の受検を手伝ったんだ」と話したら、その友人が「おもしろいので書いてみないか」と言い出したのです。それでとんとん拍子に話が進みました。
出版後は「私も同じように問題を作ってみようと思いました」「こんな学校があるのならうちも子どもを入れたい」など、うれしい感想をいただきました。公立中高一貫校の存在自体を知らないかたもまだ多いようですので、そんな読者のかたの役に立てればいいですね。
適性検査の答えはひとつとは限らない。自分の考えを自分の言葉で書ければOK
「これから問題をつくってみよう」とお考えの保護者のかたにアドバイスをお願いします。
子どもが書いてきた答えが、自分の想定した答えと大きく違っていても、頭ごなしにNOと言わないことが大切ですね。なぜなら、適性検査のような問題には「唯一の正解」はないからです。問題をつくりはじめた目的は「息子が、自分で考えたことを自分の言葉で書けるようになること」でした。記事や資料から内容を読み取って自分の考えを表現できるようになれば、それでもう成功だと思います。
また、問題をつくる側も楽しんでほしいと思います。私は息子とノートのやりとりをした2か月間、とても楽しかったのです。自分がつくった問題ですから、「あれはどういうふうにまとめたかな?」「このひっかけ問題に素直にひっかかったな」など、反応や成長を見るのがおもしろかったですね。「こんなことを考えたのか!」と感激したこともありました。手づくりの問題のやりとりをすることによって、この時期の息子の内面を垣間見ることができたのは本当によかったと思います。皆さんも、構えずに、ぜひ楽しみながら始めてください。
大二朗さんからひとこと
新聞記事の漢字でわからないところや難しい言葉はその都度母に聞きました。父の問題は、僕が好きな野球の問題もときどき出たりしました。それは市販の問題にはないので、おもしろかったです。毎日やるのはつらかったけど、絶対、九段中等教育学校に受かりたかったのでがんばりました。僕が気をつけたのは自分の言葉で書くことです。要約するときも、自分の言葉でつなぎながら書くようにしました。お父さんが横にいてベッタリ見るというやり方じゃなくて、ノートを通してのやりとりだったのも、よかったと思います。
お母さまからひとこと
小学1年生のときから、基礎的な問題集だけは、食卓で私が見ながらやらせてきました。最低限の基礎学力は、それで身についたように思います。やはり小学生のうちは塾通いさせることなく思いきり遊ばせたかったですし、夕食は自宅でちゃんと食べさせたいと思っていましたので、塾に通わずに志望校に合格できて、よかったと思っています。今感じるのは、受検前にあれだけ新聞を読んだことが、大二朗の入学後の学習や経験にとても役立っているということです。新聞から得た環境問題の知識が、先日学校で聞いた講演会のテーマと重なっていたようですし、食糧自給率や人口動態などの知識は、これから授業で取り組む学習のベースになっていくのではないでしょうか。
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<注目の本>
『塾不要 親子で挑んだ公立中高一貫校受験』 | 公立中学・公立高校と同程度の費用で独自の魅力ある教育が受けられる公立中高一貫校が日本全国に開校。「第三の道」として人気を集め、2007年度は最高約27倍という高倍率となっています。本書では実際に九段中等教育学校に長男と次男を続けて合格させた鈴木さんが、問題の分析や使用した参考書・問題集などを詳細に説明されています。 |