勝手に意味を解釈して、自分で漢字をつくってしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

漢字は苦手というほどではないのですが、書き取り問題に詰まると、勝手に意味を解釈して、自分で漢字をつくってしまいます。暗記が苦手というわけではなく、きちんと覚えれば書けるため、テストの点数も悪くありません。どうして自分で漢字を創作してしまうのか、理解に苦しみます……。

相談者:小4女子(性格・大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま


【回答】

漢字以上に心配すべき事柄が他にある。


■なぜ漢字を自分でつくってしまうのか?

「勝手に解釈して自分でつくってしまいます」とありますが、なぜそのようなことが可能なのでしょうか。それは恐らく、お子さまの性格からきている一つの能力だと思います。一般的に、大ざっぱなタイプは、本質をつかむことにたけています。さらに、論理的なタイプであるために、しっかり頭に入っているへんやつくりなどの部首の意味を使って、「このような意味ならこんな感じの漢字では?」という具合に、漢字を勝手につくってしまうのでしょう。また、読みを表す文字と意味を表す文字を組み合わせた「形声文字(花、銅、問……)」が漢字の90%を占めますので、習っていなくてもなんとか読めてしまうのだと思います。

■漢字以外にも心配すべきことがある?

本来であれば、漢字の練習は短時間でも毎日させたいものです。しかし、大ざっぱな性格のお子さまはのんびりやさんが多く、毎日コツコツやるような漢字の勉強は基本的には好きではないと思います。さらに、漢字のテストが点数的には悪くない現状では、毎日の漢字練習にすんなり取り組むのは難しいかもしれません。そんな場合は少し様子を見て、テストの点数などにより、本人が“これはまずい!”と自覚するタイミングを待つのも一つの方法でしょう。さて、漢字についてはこのようなタイミングで助言してあげればよいと思いますが、漢字以外の心配としては「精密さ」の足りなさが少し気にかかります。

■国語は「大ざっぱさ」と「精密さ」の両輪が必要

「大きく本質をつかむ能力」や「論理的に考える能力」は、中学受験はもちろん社会に出てからも求められる力です。それらはしばらしい能力であり、伸ばしてあげたい資質だと思います。しかし、「大きく本質をつかむ」だけでは物事をやり遂げ、成果を出すことはできません。そのためにはもう一つの能力である、「精密に読む」とか「精密に分析して考える」という力も必要になります。そして、中学受験の国語でもこれら二つの能力が必要になります。確かに、4年生の今の段階では、問題文や問いも内容的にそれほど高度ではないと思います。しかし、学年が上がってくると、問題文や選択肢を精密に読まないと、なかなか点数がとれなくなってくるでしょう。そうならないためにも、今から精密な読み方や解き方を身に付けておくことが必要です。しかし、大ざっぱなタイプに、往々にして欠けることが多いのがこの「精密さ」なのです。

■精密さを身に付けるには

問題文を読んで、筆者のイイタイコトをズバッと一文でまとめられたら、「本質をつかむ力」がかなりあるといってよいでしょう。それに対して、問われている箇所、すなわち傍線部を含めた前後の流れをとらえることができるお子さまは、「精密に読む力」があるといえます。また、選択肢問題で消去法により最後の2択に絞り、それらから正解の選択肢を選ぶにも「精密に考える力」が必要になります。

このように、「精密さ」は、問題を解く時に特に必要になる力であり、その力を身に付けるには「なぜそうなるのか?」を考え、本文を根拠に論理的に説明できるまでになることです。説明して、納得させることが必要なのです。たとえば、保護者のかたが時には生徒役になって、お子さまの解説を聞くというのもよいでしょう。その場合、ものわかりの悪い生徒役であるお母さんが「なぜそうなるのか?」を徹底的に質問してみましょう。先生役であるお子さまは、保護者のかたを納得させなければなりませんから一生懸命に考えると思います。そうしたプロセスが、お子さまの「精密さ」を育むことになると考えます。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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