子どもと過ごす夏 これぞ「異文化体験」[高校受験]
■これぞ「異文化体験」
私立高校に進学すると、多くの高校に「海外研修」といった行事があると思います。アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英語圏が定番です。保護者のかたも、我が子の英語力向上を期待して英語圏に行かせたいとお考えだと思います。確かに英語を母国語とするネイティブの多様な発音に生で接することは大変意義があるでしょう。ただこうした先進国では、英語以外の面、生活面では日本にいる時とほとんど変わらないのではないでしょうか。料理の量、味付け等は当然異なるでしょうが、寝具、トイレ等は普段の日本での生活とそれほど変わりなく過ごせると思います。
今、盛んに「グローバル社会の到来」「異なった分野、異なった文化の人々との交流」といったことがいわれています。保護者のかたは、我が子が「グローバル社会で活躍すること」にどのようなイメージをお持ちでしょうか。ニューヨークやロンドンで欧米人とやりとりする、そんな姿でしょうか。
私が想像するに、これから我が国のビジネスは欧米では拡大は難しく、飛躍的に拡大する先は、バングラデシュ、ミャンマー、インド、中東あるいはアフリカ諸国などではないでしょうか。そうしたことを考えた時、どんな文化にも対応できる力が、我が子には必要であることにあることに気付くでしょう。
高校時代に1回しか経験できない海外研修であれば、むしろ生活環境が我が国とはまったく異なる東南アジアなどのほうがお子さまの成長にはいい経験になるのではないか、私はそんなふうに思っています。実際そうした海外研修を行っている私立高校もあります。
それも、バンコクやクアラルンプールといった都会ではなく、タイ北部の山地の少数民族の村に生徒を連れて行っています。こんな場所ですから、当然希望者のみですが、24年も前から続けています。NGO(現在は財団)が運営する施設では地元の子どもたちと交流します。その施設には、親のいない子ども、親と離れて暮らさなければならない子どもが保護されています。なかには国籍がないため国からの支援を受けられない子もいます。まったく言葉が通じない環境でも、サッカーをしたり、拳銃ゴッコをしたりしてコミュニケーションが成立するという経験をします。アカ族の高床式の家にホームステイもします。
自分と同世代の子どもが置かれている過酷な現実があることを知り、ホームステイ先の家では、親と子の間でも「言葉がなくても通じ合える優しさと温かさ」を体感します。そうした経験をした生徒は「世界の最前線に出かけ、自分の求められているタスクを実行する力強い人間」に成長するといいます。
グローバル時代を迎えて、保護者のかたは「我が子に『英語力』を付けてあげたい」、強くそう思っていると思いますが、例に挙げた研修のように、「英語力」以上のものを子どもに与えてくれる研修もあるのです。
高校入学後に、我が子をいろいろな行事に参加させるかどうか迷うと思います。そうした時には、ちょっと違った視点からも検討してみてはどうでしょうか。