【5年生】 習い事、やめる? 続ける? [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第10回]

習い事、やめる? 続ける?

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、中学受験を考えている4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
4年生の「ほめる、叱る」について取り上げた前回に続き、今回のテーマは、「習い事」。受験の正念場ともいえる5年生2学期に向けて、夏の間に、習い事をどうするかについて考えておくことが必要です。



夏の間に考えておきたい“考える”ための時間づくり

「英語を習っているのですが、これから受験で忙しくなるからやめるべきでしょうか」
「日曜日は塾に行かせたいけれど、今習っているサッカーの練習と両立が難しい……」

この時期、5年生のお子さまを持つ保護者のかたから、よくこんな相談を受けます。

確かに、5年生の後半は中学受験の正念場です。学習内容が一気に難しくなりますから、ここでじっくり時間をかけて取り組むことが必要になってくる。特に2学期以降は“考える”ことに集中してほしい時期です。それができたかできなかったかで、達成度に大きな差が付きます。ですから、いくつも習い事をしていて、帰ってきたら疲れてバタンキュー、という状態ならば、どれかを減らして勉強に集中する時間とエネルギーを確保することが必要でしょう。ですが、習い事を急にやめさせるのはご本人のためによくありませんし、先生や監督に迷惑をかけてしまう可能性があります。夏休みの間にご本人とよく相談し、何を続けて何をいつごろやめるか、決めておくことが大切です。



本人の熱意と負担感を考慮。やめるなら達成感を味わってから

お子さまが「絶対にやりたい」と思っていることは、やめさせるべきではありません。お子さまが「勉強のために無理やりやめさせられた」と感じていたら、勉強への意欲もわいてくるはずがないからです。何をやめるかは、ご本人の納得を第一に考えてください。
また、「やめ方」も大切です。たとえばピアノなら「好きな曲集を仕上げるまで」、水泳なら「○級をとるまで」、英会話なら「一緒に海外へ行って現地で会話してみるまで」といったイベントを設定するなど、目標をつくり、お子さまが達成感を持ってやめられるようにしてあげてください。
なお、習っていてもご本人の負担感が少ないなら、やめる必要はありません。たとえば英会話で、レッスン中や行き帰りの移動中だけ英語の本や音声に親しんで、それを楽しめるなら、続けるべきだと思います。



チームスポーツなら、試合まではそちらに集中を

やめ時を考えなくてはならないのが、野球やサッカーなどのチームスポーツです。試合などの節目の前に急に抜けてしまってはチームメートに迷惑がかかりますし、ご本人にも大きな不満が残るでしょう。
ですから、早めにお子さまと相談して「この試合まで」というふうに決め、監督やチームメートにも伝えておきましょう。遅くとも10月までには、勉強に専念できる環境を整えておくのが理想ですが、むしろそれまでは試合に集中させたほうがいい。「試合までは、勉強はほどほどでいいよ。基礎だけはやっといてね」という声のかけ方がよいと思います。特に男の子は、コンスタントに集中することが苦手です。むしろ手を抜いたり集中したり、というめりはりの付け方を体得したほうが、勉強のしかたもうまくなるのです。



「やりたい!」という子どもの勢いを止めない

最も重要なのは、お子さまが少しでも自分から「やりたい!」と思うことがあれば、その意欲を止めないということです。趣味や習い事にご本人が熱中しているのであれば、やめさせるべきではありません。目の前のことに集中し、入り込めた経験は、今後勉強にも生きてきます。この時期は、集中する楽しさを実感できるような時間をつくってあげることが大切です。勉強も、集中して取り組んでみれば楽しくなったという子も少なくありません。

一方、習い事そのものが好きというわけでもないけれど、「仲のいい友達がいるからやめたくない」といったケースもあると思います。その場合は、そのお友達の保護者のかたに相談して、塾のほうにお誘いしてみるのはどうでしょうか。または、習い事がなくても、時々家にお誘いして、一緒に遊ぶ機会をつくるのもよいでしょう。
また、お子さまが習い事を「やめる」ことにためらいや罪悪感を抱いているなら、先生や監督など、本人が尊敬する大人から「今は勉強に専念してはどうか」と言ってもらうのもよい方法です。また、中学受験において5年生の2学期が重要であることを塾の先生からお子さまに伝えてもらい、ご本人と保護者と先生の三者で話し合うのもよいでしょう。 
勉強に正面から取り組む楽しさと大変さを、お子さまが実感し、ご自分で時間の使い方について考えるようになれば理想的です。

次回は、この時期の6年生に見られる「勉強に意欲が向かない」傾向について取り上げます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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