【6年生】 小6 夏休みなのに勉強に意欲が向かない? [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第11回]

小6 夏休みなのに勉強に意欲が向かない?

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
前回5年生の「習い事」について取り上げました。今回は、6年生のこの時期にみられる燃え尽きや無気力、「勉強に向かえない」傾向について取り上げます。



「脅迫型」の指導法になっていないか

言うまでもなく、中学受験をするお子さまにとって、6年生の夏休みは非常に大切な時期です。ところが、夏休みになってみても、「気持ちがまったく勉強に向かない」といった相談をよく受けます。ご本人にお会いしてみると、どちらかというと幼いお子さまが多いように思います。素直なようだけれど、自分から発言はしない。計算の式や漢字などもいい加減に書いていて、いかにも「いやいや」勉強している感じが伝わってきます。

こんな時、ぜひ注意していただきたいのは、保護者のかたや先生の教え方が「脅迫型」になっていないか、ということです。テストの点数が低いと「なぜもっとがんばれないの?」と怒ったり、「もうテレビは見せないよ」「ゲーム機取り上げるよ」などと脅したり。脅迫されると、子どもはいやいやながら勉強しますが、最小限のことしかやりません。心が閉じていると、勉強の内容も頭に入っていかないので、成績が伸びる可能性も極めて低くなります。つまり、脅迫型の指導は、子どもを勉強に向かわせないようにしているのと同じなのです。
ですから、現状でお子さまの気持ちが勉強に向かっていないとしたら、ここで勉強法を見直す必要があります。



勉強法の見直し--対話型の指導で基礎力と自信を

勉強法は、まずは初心者に勉強させるスタイル(第2回も参照)に戻してください。基礎だけに絞り、簡単な問題に取り組ませて、どんどん○(まる)を付けてあげます。また、生徒が完全に受け身で「お客さん」状態ではやる気も出ませんし、自信も付きません。指導法も、個人のペースに合わせてくれるグループ指導や個人指導に変えて、お子さまの発言や質問を引き出してくれる先生を、なるべく早く見つけるようにしてください。塾にそういう先生がいないかと要望を出すのもよいでしょう。お子さまは、自分の考えを言えるようになり、「いいね、その調子だよ」とほめられているうちに、しだいに自信を付けていきます。長い夏休みの間に、基礎を立て直すことが大切なのです。
ちなみに、保護者のかたへのアンケートによれば、4年から受験準備を始めたかたは5年生の時、5年から始めたかたは6年生の時に、塾や指導者を変えるケースが多いようです。



広い視野で志望校の再設定を--山は一気に登る必要はない

また、現実の実力に対して目標が高すぎても、子どもはやる気を失います。難関校でなくても、よい環境や校風があり、全国的に活躍しているクラブがある、学校行事が盛んでユニークなど、ご本人があこがれ、目標としてがんばれるような志望校を、できれば夏休みの間に見つけてあげてください。入学試験も、ひねった応用問題で振り落とすのではなく、基礎の力だけをしっかりと見る学校が増えています。「基礎だけで大丈夫」となれば、子どもの負担感をかなり軽減してあげることができます。

志望校に関しては、むしろ保護者のかたの広い視野が必要かもしれません。受験まであと半年、いきなり高い山を越えようとしてもあとで無理がきます。お子さまの今の学力に合った中学に入っておいて、また高校受験をしてもよいし、学内でクラスを上げることを考えてもいい。お子さまが入学してから「後伸び」する学校を選ぶことが大事です。中学・高校の間に、自分の好きな道に向かう「学び方」を身に付け、将来、ご本人にとっての高い山に挑戦する力を付けることが重要なのではないでしょうか。

なお、「偏差値40」とランクされている中高一貫校の多くは、入学時に偏差値40であった生徒を、3年後の高校入試の時には偏差値60まで伸ばしてくれる学校であるといえます。志望校を見直す場合、「偏差値を下げた」と考えず、発想の転換をしていただきたいと思います。そして、挑戦させる以上はお子さまに「がんばってよかった!」という達成感を持たせてあげてください。



夏こそ生活習慣の見直しと、“一休み”の時間を大切に

また、意欲や集中力は体力と密接な関係がありますので、夏休みの間に生活習慣を見直すことも大切です。バランスのよい食事を心がけ、お子さまが生活リズムを守れるよう、気を配ってあげてください。そして、外で思いきり遊ぶ、一緒に散歩やストレッチをするなど、体を動かす機会をぜひつくってあげてください。キャンプや海水浴など、自然の中で五感を働かせることができるイベントもよいですね。

中学受験には、さまざまなストレスが付きものです。ですから、6年生の夏休みは、お子さまだけでなく、保護者のかたにもかなり疲れがたまってくる時期かと思います。夏休みこそ、保護者のかたもちょっと立ち止まってひと息つき、お子さまの進路について少し長いスパンで考えてみてはいかがでしょうか。

来月のテーマは、「夏休み、何をどこまで?」。4年生の夏休みの勉強法について取り上げます。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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