【5年生】志望校について、広い視野で再検討を [中学受験歳時記コラム ~いま取り組むべきこと~ 第61回]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。このコラムでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。
前回に続き、今回は5年生を対象に「志望校の再検討」について述べます。



「偏差値」以外のものさしで志望校の再検討を

12月に模擬試験を受けたお子さまも多いと思います。偏差値や、現時点での志望校の合格可能性が見えてきて、志望校を変えるべきかと悩んでいる保護者のかたも多いのではないでしょうか。
大まかにいって、偏差値55以上であれば、中学受験の勉強に十分ついていっている状態、50以下は、教科や単元によってはついていけていない状態といえます。ただし、ついていけないから勉強に向いていないかというと、そうともいえません。学ぶ素養はあっても、精神的に幼くて気持ちが乗らない、勉強することと目標がつながらず意欲がわかない、といったケースが多いようです。

そんな場合、私がおすすめするのは、現在の学力でも合格が見えやすく、お子さまの長所を伸ばしてくれそうな高校を見つけておくことです。意欲をかきたてるためには、負担は大きすぎないほうがよいのです。「この調子でがんばると、こんな学校に合格できるよ」というふうに遠すぎない目標を設定し、学校生活へのさまざまな期待を膨らませてあげてください。難関校を受けるか受けないかはいつでも決められますが、学力以外の価値観に照らして、お子さまにぴったりと思われる学校を見つけるのは時間がかかりますので、今はむしろそちらに注力すべきです。



選ぶ側のものさしも多様化している

偏差値は学力の目安として便利なものですが、1本のものさしにすぎません。とはいえ、塾などではやはり、偏差値が高い学校が「上」という表現が普通に使われます。偏差値は限りなく上昇志向を誘ったり、劣等感を刺激したりするものです。だからこそ、保護者のかたは偏差値以外のものさしをいくつも持って、広い視野でお子さまの志望校の再検討をしていただきたいと思います。志望校選びとは、結局「子どもの将来に何が必要か」という、保護者のかたの価値観そのものといえるかもしれません。

一方、前回もふれましたが、適性検査や面接のみ、英語のみの試験など、中学入試の選抜法も多様化しつつあります。学校側でも、偏差値だけでなく、さまざまなものさしを用意して、才能ある生徒を獲得しようとしているわけです。志望校と同時に、お子さまが力を発揮できそうな入試を検討し、準備を始めることも大切です。

入試本番まで、あと1年あまり。年初のこの機会に、お子さまの学習法とともに志望校を見直し、この1年でどんな力を付けていくべきかをじっくり考えてください。「人が何と言おうと、ここはよい」と、保護者のかたも本人も思える志望校が見つかると、勉強への意欲も変わってきます。

次回は6年生を対象に、1月に取り組むべき課題について取り上げます。



プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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