本質を問われる質問が不得意で、初めて見た文章を前にするとあがってしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者

小5女子(性格:神経質・感情的なタイプ)のお母さま


質問

物語を読み取ってその文章の本質(本題)を聞かれる質問や、「何文字以内で本文から書き抜く」という作業が不得意のようです。学校の「単元テスト」のように、一度授業などで解説されたものは理解できますが、模試などで初めて見た物語文や説明文を前にすると、あがってしまってできなくなるようです。


小泉先生のアドバイス

「大きくとらえるための練習」と「まちがえることを過度に恐れない」が大切。

●「神経質なタイプ」の長所と短所
一般的に「神経質なタイプ」には、まじめにコツコツ努力するお子さまが多いようです。しかし、細かいところを気にしすぎるあまり、物事の本質を見失ったり、自分の弱点にフタをして問題を先延ばしにしたりする傾向があります。お子さまの「本質を問う問題」が苦手というのも、神経質な性格からきているのかもしれません。また、「抜き出し問題」が弱いというもの、このタイプによく見受けられる弱点です。問題文を読んで理解するためには、「大きくとらえる」と「詳細にとらえる」という2つの読み方が必要ですから、大きく「本質」をとらえる練習をして弱点を克服しましょう。

●大きくとらえるための練習
物語文で筆者のイイタイコトをとらえられるようになるためには、物語を読んで他の人(たとえばお母さま)と筆者からのメッセージは何かを話し合ってみることが効果的です。お子さまがまだ小さいうちは、童話でもよいでしょう。学年が上になるにつれて、複雑な内容の物語を一緒に読み、感想と共に筆者のイイタイコトをまとめるのです。その物語をまだ読んでいない人に説明するような気持ちで、簡単なあらすじとイイタイコトをまとめ、「○○の物語」と一文で表現できるようになることをめざしてみましょう。

●日常生活で鍛える
本質や筆者のメッセージをとらえる練習は、物語文を読む時だけではありません。日常生活においても練習できます。たとえば、親子で映画やアニメなどを見て感想を話し合ってみましょう。ただし、サスペンスや探偵ものではなく、メッセージ性の高い内容のものがよいでしょう。それらを親子で見て、作者はこの作品で何がイイタカッタのかを互いに意見交換するのです。最初はどのようにいえばいいのかわらないお子さんでも、保護者のかたの表現方法を学んで、自分の気持ちや感情を表す言葉を使えるようになり、的を射たことをいえるようになっていくと思います。

●間違えることを過度に恐れない
さて、「一度授業などで解説されたものは理解できる」のに、なぜ「模試などで初めて見た物語文や説明文を前にするとあがってしまう」のでしょうか。もしかしたら、学校の授業では、解説された内容を「考える」とか「感じる」ということをせず、「この文章はこのように理解する」と言われ、それを知識として覚えているのではないでしょうか。

ここでぜひ学んでほしいのは、「解説の内容」だけではなく、「なぜ」そのように理解するのかという「理由」と理解するための「方法」です。これらを習得すれば、解説された文章だけではなく、他の文章を読んだ時にも応用できるからです。そして、習得した「方法」を使って、初めての文章でも怖がることなく読んでいきましょう。慣れないうちは独善的な理解をしてしまうかもしれません。しかし、それでもかまわないのです。まちがえることを恐れていては、進歩はありません。特に、「神経質なタイプ」はまちがいを過度に恐れる傾向がありますので、「まちがえることは恥ずかしいことではない」「まちがいを見つけ、それを改善していくことが進歩につながる」ということを十分に納得させましょう。

これらの弱点を意識し、改善すべく練習していけば、「神経質なタイプ」は何といっても努力家ですから、ご質問にあった問題点は徐々に解消されていくと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A