早稲田大学 スポーツ科学部(2) 仲間の手厳しい評価が学生を変える[大学研究室訪問]
日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。訪れたのは、トップスポーツビジネスを学ぶ、早稲田大学の平田竹男教授の研究室です。トップスポーツビジネスを学ぶ意義について語っていただいた前回に引き続き、ゼミでの学びが具体的にどのように行われているのか、高校生までに何をすべきかなどについて伺いました。
■ゼミでは全員が毎回発表、評価も学生同士で
大学のゼミで学生が1年間に発表する回数は、2~3回という場合が多いでしょう。しかし、私は必ず毎回、全員にテーマについて調べさせ、発表をさせています。傍観者ではなく当事者として参加する経験を積まなければ、自分でものを調べ、自分の頭で考え、まとめる力は付かないからです。
また、ゼミでは毎回、その日の発表の上位3人と下位2人を、学生たち自身に決めさせています。厳しいと思われるかもしれませんが、社会に出れば評価を受けるのは当然のことです。上位も下位も、選ばれる学生の名前は変わります。下位で選ばれ続けていた学生が、刺激を受けて発奮し、上位に選ばれることもあります。ゼミを重ねるごとに、明らかに顔付きが変わる学生もいます。そんな瞬間に立ち会えるのは、私にとって大きな喜びです。
■「自分を科学する」姿勢が、壁に当たった時に役立つ
学生たちには、「自分を科学する」ことをすすめています。自分の言動や心身の状態を客観的に分析し、どんな時に体や心の調子がよくなるのか、あるいは悪くなるのか、悪くなった時にはどうすればよくなるのかを知っておくのです。それは、人生を歩んでいくうえでとても重要なことです。
どんなに順調な人生を歩いていても、いつかは壁にぶつかる時が来ます。社会人になってから初めて挫折を味わい、なかなか立ち直れない人もいます。学生時代から自分を客観的に見る姿勢を身に付けておけば、そんな時にも対応できるのです。
好きなことを徹底的に「分析」する経験を
東京・新宿区の早稲田大学早稲田キャンパス内にある研究室にて
高校時代までには、好きなことをさまざまな角度から徹底的に「分析」する経験を積んでおくべきです。たとえばスポーツが好きな場合でも、ひたすら練習して技術や体力を磨いたり、好きなチームを応援したりと、一面だけ見てしまいがちです。しかし、たとえばボールはどこでどのように開発・製造されるのか、チームは誰がどんなふうに運営しているのかなど、幅広い視点から見て、調べてみるのです。
好きなことに夢中になりすぎると、勉強に差し障りがあると考える保護者のかたもいるかもしれません。しかし、サッカーが大好きで、イギリスのサッカークラブのサイトから情報を得るために英語を熱心に勉強し、マスターした中学生もいます。一つの分野を徹底的に分析し、極めることで、どんな分野にも通じる力がつく--そのことを、保護者の皆さん自身に肝に銘じてほしいと思います。
学生に聞きました! |
坂本 彩さん(4年生、埼玉県出身) ゼミで育んだ、「日本と海外をつなぐ」夢 中学生の時、学校の職業調べでスポーツビジネスについて知り、スポーツに関連した仕事に就きたいという夢を抱きました。そして、高校生の時にオープンキャンパスで平田先生のお話を伺い、夢をかなえるためにも先生の研究室で学びたいと思って、受験勉強に励みました。両親も、そんな私の夢を理解して、スポーツビジネス関連のテレビ番組をチェックして録画するなど、後押しをしてくれました。 受験勉強では、小論文対策としてスポーツ関連の本を読み、内容や感想などをノートにまとめていました。念願かなって合格したあと、大学の授業でも、その時に読んだ本が題材になることがあり、再びノートが役立ちました。両親が録画してくれた番組が授業で使われたこともあります。夢を持ち、それに向かって勉強したことが大学での学びにもつながったと実感し、応援してくれた両親に改めて感謝しています。 私は入学前まで日本のスポーツにしか興味がありませんでしたが、平田ゼミをきっかけに海外に目が向くようになりました。社会人の方々との交流の場では、先生の指導で全員と話すように心がけ、たくさんの刺激を受けました。そんな経験から、さまざまな国の人々とのコミュニケーションを通じて日本と海外をつなぐ存在になりたいと思い、航空会社の客室乗務員をめざして採用されました。これからは、仕事を通じて視野を広げ、出会った人とのつながりを大切に、いつかはスポーツに関わる仕事もしたいと思っています。 |