合格実績が伸びれば、受験者数が増える?[中学受験]

「昨年の大学合格実績が上昇したので、今年の中学入試では受験者数が増加した」という話を中学入試分析で聞くことが多いが、これは多くの学校に当てはまり、一般論として「大学合格実績の増減は翌年の受験者数に影響を与える」といえるのか? 直近の数字で考えてみる。

下に掲げた表は、2012年の大学合格実績前年対比と、2013年の受験者数前年対比が増減している学校数を大学合格実績と受験者数の関係がわかるように一覧表にしたものである。

Aランク校を例に説明する。
まず、縦軸にとった大学合格実績前年対比(計)を見ていくと、前年対比105%以上の増加が9校、95%以上105%未満の横ばいが0校、95%未満の減少が3校であった。
次に同じAランク校(系)を横に見ていくと前年対比105%以上の増加が4校、95%以上105%未満の横ばいが3校、95%未満の減少が2校であった。
ここで注目すべきは、大学合格実績が増加した学校9校のうち、翌年、受験者数が増加した学校は4校(44%)であったことで、この結果からだけでは、大学合格実績の増加で翌年の受験者数が増加するとはいえない。

しかし、Bランク校以降についても調べてみると、大学合格実績が増加すると翌年の受験者数が増加する「傾向」があることはわかる。ただし、ランクが下がるほど受験者数の増加する割合は少なくなる「傾向」もあることがわかった。

次に、同じAランク校で大学合格実績が減少した3校を見てみよう。3校と少ないが、大学合格実績が減少した場合は、少なくとも受験者数が増加した学校はなかった。
データ件数が少ないので、Bランク校以降についても大学合格実績が減少した学校で、受験者数が増加した学校があるかを見てみると、CとFランク校でそれぞれ2校と1校あるだけできわめて少ない。

このことから、A~Fランク校では、「大学合格実績が減少した学校の、受験者数が増加することはめったにない」ということになる。つまり、A~Fランクでは「大学合格実績の増減は翌年の受験者数に影響を与える」といえそうだ。(G~Hランク校では、この傾向は見られない。)

大学合格実績上昇によって、受験者数が顕著に伸びることは少ない。しかし、全体的な傾向として「大学合格実績の増減は<翌年>の受験者数に影響を与えることは多い」とはいえるだろう。たとえば、前年ができる生徒が多いあたり年や浪人生が多くなった年などで、たまたま大学合格実績が増加した年もあれば、その翌年は単に例年並みに戻っただけなのに減少したように見えることもあるだろう。

大学合格実績は、単年度で判断するのではなく、少なくとも3~5年分の推移を見て増減傾向を調べておきたい。そのうえで増加傾向が認められれば、学力を伸ばしてくれる教育システムがある学校と考えられる。
多くの保護者が、実績「低下」した学校については、その学校を選択することを控えている様子をうかがえる。一方、実績「上昇」については、学校側の継続的努力を見守っているといえようか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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