増える障害者の大学進学 支援・窓口対応などに課題も

特殊教育から特別支援教育に切り替わり、発達障害など障害のある子どもたちへの対応が一般の学校でも進んでいます。しかし、特別支援が必要なのは高校以下の学校に限りません。日本学生支援機構の2014(平成26)年度「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の結果、大学・短大・高等専門学校に在籍する障害のある学生は1万4,127人で、調査を始めた2005(同17)年度以降で過去最多を更新したことがわかりました。

調査結果によると同年5月現在、国公私立の大学・短大・高専に在籍する者のうち医師の診断書や健康診断で明らかになった障害のある学生は前年度より678人増の1万4,127人(大学1万3,045人、短大535人、高専547人)でした。障害のある学生は2005(平成17)年度に5,444人でしたから、8年間で2.6倍になった計算です。それでも全学生数に占める障害のある学生の割合は0.44%にすぎません。

学生を障害別に見ると、精神疾患など「その他」が22.3%、「病弱・虚弱」が21.5%、「発達障害(診断書有)」が19.3%、「肢体不自由」が17.9%、「聴覚・言語障害」が11.7%などとなっています。このうち「肢体不自由」や「聴覚・言語障害」の人数の伸びは比較的緩やかなのに対して、「発達障害」は調査対象となった2006(平成18)年度は127人だったものが14(同26)年度には2,722人と急増しています。同様に「その他」と「病弱・虚弱」の学生も急増しています。

障害のある学生が在籍していると回答した学校の割合は、大学が79.4%、短大が46.0%、高専が94.7%でした。ただし、障害のある学生は増えているものの、課題もありそうです。学校が特別な支援をしている障害のある学生は7,482人(大学6,943人、短大266人、高専273人)で、障害のある学生の53.0%(大学53.2%、短大49.7%、高専49.9%)と約半数にすぎません。また障害のある学生が在籍する学校のうち、授業などで学生に特別な支援をしている学校の割合は84.0%(大学88.0%、短大68.8%、高専83.3%)で、在籍校の1割以上が特別な支援を行っていません。障害のある学生がいないところも含めた学校全体で見ると、特別な支援を実施している学校の割合は、大学が69.9%、短大が31.6%、高専が78.9%となります。特別な支援の例としては、肢体不自由では「教室内座席配慮」や「使用教室配慮」など、発達障害では「注意事項等文書伝達」や「休憩室の確保」などが挙げられます。

障害のある学生の相談窓口設置状況を見ると、大学では「設置有(学生に周知)」が33.4%、「設置有(学生に周知していない)」が24.5%、「設置無(各部署対応を周知)」が24.7%、「設置無(周知していない)」が17.4%でした。大学全体の66.6%が相談窓口を設けていないか、設けていても学生に周知していないということになります。障害のある学生への対応はできるだけ避けたいという大学の消極的な姿勢がうかがえます。

障害のある学生は着実に増えていますが、大学などの受け入れ態勢はまだまだ改善の必要があるようです。障害のある子どもたちにも大学教育などの機会が保障されることが望まれます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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