「○○が××だから△△」と書くべきところ、○○の部分が抜けていたりする[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱなタイプ)のお母さま


質問

文章を読んで、文章で答える問題を丁寧に書かない。「○○が××だから△△」と書くべきところ、○○の部分が抜けていたりする。


小泉先生のアドバイス

「問い」と「答案」だけで、だいたいの内容がわかるような答案を心がける。

記述問題の書き方について、何をどのように書けばよいかというご質問です。ここでの「○○」は「主語」または「相手」、「××」は「理由」のことだと思います。また「△△」は「キーワード」、すなわちその問題で中心的に問われているものでしょう。記述の書き方の基本は「(1)理由+(2)相手+(3)キーワード+(4)文末」であり、「○○」の部分が抜けているというのは、答案に「主語」または「相手」がないということでしょう。

さて、ご質問はよくわかりますが、お子さまが「主語」や「相手」を抜かしてしまうのも理解できます。なぜならば、テキストや模擬試験で示される模範解答にも「主語」や「相手」がない、あるいは丁寧に「○○が××だから△△」とは書かれていない場合が少なくないからです。そして、その理由としては次のようなことが考えられます。

まず、字数制限が厳しく、「キーワード」と「文末」しか書けない場合です。たとえば、「その時の道子の気持ちを20字以内で書きなさい。」という問い対しては、「タイミングが合わず腹立たしい気持ち。(18字)」くらいの書き方がせいぜいでしょう。もっと詳しく書くとすると、たとえば「道子は、『ぼく』がリコーダーを吹き始めるタイミングが合わないので腹立たしく思っている。(43字)」となりますが、字数がオーバーしてしまいます。あるいは、文末によっては「○○が」とか「○○は」とは書きづらい場合もあります。たとえば「一郎は、明日の野球の試合で打てるか不安な気持ちだった。」という内容の文章があり、それに対して「どのような気持ちですか」と「気持ち問題」が問われた時、「~気持ち」という文末にするなら、「明日の野球の試合で打てるか、一郎の不安な気持ち。」と書くのが自然でしょう。このように、ある時は「○○」があり、ある時はないのですから、子どもとしても困ってしまいます。それではどうしたらよいのでしょうか。

私が子どもたちを指導する時は、「親切な答案を心がける」ことを原則としています。そして、「親切な答案」とは「『問い』と『答案』だけで、だいたいの内容がわかるような答案」を意味します。たとえば、次のような、「問い」と「答案」があったとします。


問い:傍線部(2)について、この時、道子が「軽く舌打ち」をしたのはなぜか、40字以内で答えなさい。
答案:リコーダーをうまく吹けないのに、少しも練習しない「ぼく」が腹立たしかったから。


この「問い」と「答案」を読んだ時、いったい何の話なのか、本文を読まなくてもだいたい想像ができます。おそらく、学校の演奏会ために練習をしていて、道子さんは指揮者あるいはリコーダーのリーダーなど、何かの責任者なのでしょう。でも、「ぼく」はリコーダーがうまく吹けず、しかも練習しようともしません。そんな「ぼく」に道子さんは腹を立てていて、何かの拍子につい舌打ちしてしまった、そんな情景が想像できます。

この「『問い』と『答案』だけで、だいたいの内容がわかるような答案」という基準は、子どもたちにも納得性が高いので、「ほら、これだと何を書いているかわからないよね」と言うと、「なるほど」とわかってもらえているようです。国語、特に記述問題は算数のように「これしか答えがない」というように1つの表現に特定できない場合が多く、そのため子どもたちは「その時々で言っていることが違う」と混乱してしまいがちです。そのため、このような抽象的な基準でも、子どもたちにとっては便利な指針になると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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