併願校への進学における親の役割[中学受験]

併願校として受験した学校に進学したと思われる在校生のうち、約70%は学校満足度が高い。このことから、進学先は併願校だったが、進学してみたら、たまたま「我が子に合った学校」であったか、もしくは当初から「我が子に合った学校」を併願校として選定していたケースも考えられる。今回は誰が、第一志望校や併願校を含む志望校を選定したかを調査・分析する。

グラフは、有名中高一貫校在籍者の保護者に、「入学したかった学校」と「志望校決定権者」についてアンケートを行い、誰に進学校の決定権があったかの結果をまとめたものだ。グラフを見ると、「1.ぜひこの学校(第一志望校)に入学したかった」の合計は全体の43.9%で、合格率としては高すぎる。第一志望校合格者が多いことになるが、第一志望校は難関校・上位校や人気校で、合格倍率が3倍以上の学校が多く、合格率は30%前後となるはずだ。特に、受験生本人に決定権がある場合の55.6%は極端に合格率が高い。受験生本人の「1.ぜひこの学校に入学したかった」には併願校が含まれている可能性がある。つまり、受験生本人の選定した場合は、第一志望校だけでなく、併願校も「1.ぜひこの学校に入学したかった」と考えていた可能性が大きい。また、父親に決定権がある場合は、進学先が「1.ぜひこの学校に入学したかった」が14.3%となり、極端に低くなる。父親が決めた第一志望校に合格しても「2.もっと入学したい学校がほかにあった」ことになる。子どもは、自分で決めたことには前向きになれるが、親には反発するのだろう。特に父親への反発は強い。母親が決定する場合は、父親ほどの反発はないが、受験生本人と父親の中間値となる。志望校を子ども自身に決めさせることは、受験勉強のやる気を高めるだけではなく、入学後も前向きに学校生活に取り組めることにもつながる。



父親や母親が志望校を選定したご家庭で、併願校が進学先となった場合は、どうすればよいだろうか。本来、志望動機は併願校選定時に設定させるべきだが、このケースでは、進学先の併願校に志望動機がないことになる。その場合は、後付けで志望動機を子どもに持たせてあげることになるだろう。進学先の志望動機は、子どもに考えさせるとよいが、後付けということもあり、親が子どもに納得させることになる。子どもに話す時には反発を受けないように、併願校のよさを納得させて志望動機を持たせ、進学させなければならない。グラフを見ると、母親が子どもに話したほうがリスクは少ないようだ。父親は母親に協力し、併願校によいところを見つけ、志望動機を分析してほしい。進学先の志望動機を子どもに納得させ、進学した学校でがんばれるようにしてあげることが大切だ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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