併願校に進学する場合の対応[中学受験]

近年、倍率や難易度は緩和傾向となってはいるが、誰もが第一志望校に合格できるわけではない。難関校・上位校の男子校、共学校では合格倍率が3倍以上の学校が多く、少なくとも3人に2人は第一志望校に入学できない計算となる。いわゆる併願校に進学することが結果としては多くなる。しかし、たとえ併願校で不本意入学であってもその進学した学校に満足ができれば、何ら問題は生じない。

グラフは、有名中高一貫校在籍者の保護者に、「入学したかった学校」と「我が子に合った学校」についてアンケートを行い、入学した学校が我が子に合っていたかどうか、の結果をまとめたものだ。進学先が第一志望校であれば、「1.ぜひこの学校に入学したかった」と考えられる。そのように回答した保護者で、我が子に合った学校かどうかが「はい」である割合は92.0%で、学校満足度が高い。「いいえ」と「どちらとも言えない」の合計は8.0%と少ないが、第一志望校に進学しても、入学してみたら期待外れで、学校満足度が低くなることもあるとわかる。また、「2.もっと入学したい学校がほかにあった」と「3.この学校に入学するつもりではなかった」は併願校に進学したケースだと思うが、「はい」はそれぞれ73.1%と66.7%で、併願校への入学でも70%程度は「我が子に合った学校」と考えており、意外に学校満足度が高いことがわかる。併願校だったが、進学してみたら、たまたま「我が子に合った学校」であったケースだけではなく、「我が子に合った学校」を併願校として選定していたケースも考えられる。「いいえ」や「どちらとも言えない」の合計はそれぞれ26.9%と33.3%で、併願校に進学した30%程度が進学後の学校満足度が低く、不本意入学が進学後に悪影響を及ぼした可能性がある。



当然のことだが、第一志望校が不合格であれば、子どもががっかりするのも無理はない。しかし、子どもはすぐに立ち直る場合も多く、入学までに新たな学校生活への期待と希望に胸をふくらませる。それは、グラフの併願校進学と思われる在校生のうち、約70%は学校満足度が高いことからもわかる。しかし、残りの30%程度は不本意入学を引きずってしまう。子どもは、親が発する失意の言動で、併願校への進学が不本意であることを強く認識させられるのではないか。そうであれば、親が進学後の学校満足度を低下させる可能性がある。

親は、がっかりした姿を子どもに見せるべきではない。親は、子どもががっかりしている時こそ、子どもを励まし、進学したいという気持ちにさせる必要がある。進学したいという気持ちの原因が志望動機となる。本来、志望動機は併願校選定時に設定させるべきだが、進学先の学校に志望動機がない場合は、後付けでも志望動機を子どもに持たせてあげるとよい。志望動機の有無が入学後の満足度を決めると考えてもよいだろう。中学から私立に進学するのは、自分自身を伸ばすことが目的なので、もし進学先が学力や人間力を伸ばしてくれる「我が子を伸ばしてくれる学校」であるならば、説得力のある志望動機となるだろう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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