答えが合っているのに解答例と違う解き方をしている時は、どう指導したらよいでしょうか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

算数は大好きで得意です。難しい問題を自力で解くのが楽しいようですが、答えが合っていても解答例と違う解き方で解いていたり、途中式などを飛ばして書いていたりします。解法を説明させてみると「なるほど」と思わされることもあるのですが、自分が「数学」を苦手だったこともあり、子どもの勉強を見てあげることが手に負えなくなってきました。このような場合はどうやって、まる付けなどの指導をしたらいいのでしょうか?


相談:

小4男子(性格:強気なタイプ)のお母さま



【回答】
保護者のかたは、「コーチ」よりも全体を見渡す「監督」に徹する。


■答えが合っていたら「まる」

結論から申し上げると、解答例と違う解き方をしていても、“答えが合っていたら「まる(○)」を付ける”ということになると思います。解答例と違う解き方をしていた場合は、お子さまに解法を説明させるのもよいと思いますが、難しい問題になると判断ができない可能性があります。解き方で判断ができないのであれば、当然、○×を決めるのは最後の答えだけになります。

中学受験の算数は、4年生から本格的になってきます。カリキュラムによっても違いはあると思いますが、文章題も難しいものが増え、途中経過を含めた採点には各単元の内容や解法に対する深い理解が必要になります。そのような知識がない場合、しかも解答例とは違った答案であれば、過程を含めた答案の採点はかなり難しいと思います。

■数学の考え方ではダメ

解法の良し悪しまで含めて答案を採点するのであれば、中学受験の算数をマスターする覚悟が必要でしょう。解法の流れを追えるだけの知識が必要ですし、場合によってはお子さまに正しい解き方を説明しなければなりません。この時注意すべきことは、数学の考え方や解法を持ち込んではダメだということです。中学受験の算数は、数学のように方程式やピタゴラスの定理などを使わないのが原則です。さらに、通っている塾(あるいは使っている問題集)の解き方に合わせる必要もあります。これは、地域によって解き方が多少違う場合があるからです。特に、関東と関西に違いがあるようです。これらを無視して教えたり採点したりすると、お子さんが混乱して、「塾(あるいは問題集)と解き方が違う……。もういいよ!」ということになります。

■中学受験の算数をマスターするのはかなり大変

さて、中学受験の算数をマスターするということですが、これはかなり大変だと思います。ご自身に中学受験の経験があり、数学が得意であればまだしも、そうでなければ一から学び直す気力や時間が必要だからです。採点するということは、×にした場合、当然なぜ×なのかを説明しなければなりません。採点するだけでも、教えるという要素が必要になる場合があるのです。そして、小学生に教えるということは、高校生に教えるのとは別の意味での難しさがあります。なぜなら、抽象的な概念を使わずに「なるほど」と納得させるのは、なかなか難しいからです。もちろんこれらをこなしている保護者のかたもいらっしゃいます。私自身、「塾の先生よりわかりやすい」と子どもが言うほどのスゴ腕の保護者のかたを何人も存じ上げています。でも、このようなかたは例外であって、一般的ではないと考えます。

■お母さんは「コーチ」ではなく「監督」に徹する

以上のような理由から、答えが正しければまるを付ける、つまり結果だけを確認するのが現状としては最良の方法だと考えます。「教えること(コーチ)」はプロである塾や家庭教師に任せて、ご自分は全体を見渡す「監督(管理)」に徹するほうがうまくいくケースが多いでしょう。もちろん算数や国語の答え合わせをするのも、管理ということで保護者のかたが行ってもよいと思いますが、あくまでも○や×が付けやすいものだけ。算数の途中式や国語の記述問題などは、自信がない限りは手を出さないほうが得策と考えます。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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