企業発の学問「ロジスティクス」が、社会を便利で快適にする
大学や学部をどのように選び、何を学べば将来に生かせるのか。そのヒントを求めてさまざまな大学の研究室を訪ねるシリーズ。今回は、現代社会を便利で快適にする「ロジスティクス」を専門とする、流通経済大学の矢野裕児教授の研究室を訪ねた。ロジスティクスとは、モノや情報を適切な時、量、状態で届けるための手段を考える、今注目の学問である。
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私の専門は「ロジスティクス」、以前からある言葉で言えば「物流」です。そう聞くと、トラックや飛行機などの輸送手段を思い浮かべるかたが多いでしょう。しかし、ロジスティクスがめざすのは、ただ、モノを速く効率よく運ぶことだけではありません。
代表的なものはトヨタ自動車の「ジャストインタイム」と呼ばれる生産方式ですが、身近なところでは回転寿司にもロジスティクスが活かされています。世界中の海のどこからネタを調達し、どうやって日本に運び、どこでどうスライスするか。おいしさ、新鮮さ、安さ、速さのバランスをとりながら、ネタごとに検討します。また、皿にICチップを付け、皿の流れを管理し、精算を楽にしたり、注文をタッチパネルにしたりして、注文を素早く受けられるような工夫をしています。必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ、必要な状態で届けるために、モノや情報の効果的な流れ方を考えるのが、ロジスティクスなのです。
東日本大震災の際、キャップが足りないことでペットボトルの商品が品薄になった、紙やインクが不足して本や雑誌が出せない、といった事態が起きたのを覚えているでしょうか。実は、ロジスティクスが進んでいたことが、原因の一つと指摘されました。企業が効率化のために工場の数をどんどん減らし、在庫を少なくしていたため、数か所の工場が被災して生産ができなくなった途端に在庫が底をついてしまったのです。
ロジスティクスを考えるには、万一に備えて在庫を確保するなどの、リスク管理の配慮が必要です。しかし、企業では、そうしたもうけにつながらないことは後回しにされがちです。環境問題にも同じことがいえます。そこで最近では、大学がそうしたリスク管理や環境問題を考慮したロジスティクスを研究し、社会に広めていく役割も期待されるようになっているのです。
出典:流通経済大学 流通情報学部 流通情報学科 モノや情報を適切な時、量、状態で届けるための学目「ロジスティクス」が社会を便利で快適にする -ベネッセ教育情報サイト