「勉強」のイメージが変わるポジティブワード [やる気を引き出すコーチング]

「『勉強しよう!』と言って、やる気になる子どもは今、ほとんどいませんよ。『勉強』という言葉自体が子どもにとっては、もうネガティブなイメージなんです。『面白くないもの。やりたくないもの。でも、やらないと叱られるから我慢してやらないといけないもの』というイメージです。『勉強』という言葉を出した時点で、子どもはすぐブルーになります。なので、私は、『勉強』という言葉は使わないことにしています。違う言葉に言い換えて使っているんですよ」と、教えてくださったのは、来年、高校受験を控えた中学3年生のコーチングをしているというMさん。
「へー! いったい、どんな言葉を使っているんですか?」。聴かずにはいられません。返ってきたMさんの言葉に、私は「それは面白い!」と、思わずひざを打ってしまいました。



ネガティブワードを言い換える

「『勉強しよう』じゃなくて、『貯金しよう』って言っています。『貯金』すると、どんどん自分の中に、知識や考える力がたまっていきますよね。たくさんたまればたまる程、受験は楽になります。1時間勉強することを、『1万円貯金する』という言い方にしています。『今日は、何万円貯金した?』というふうに子どもたちには質問します。あと、『受験』という言葉も、正直なところ、あんまりワクワクしないですよね。プレッシャーしかない感じがしませんか? 私がコーチしている子どもたちは野球部だったので、『受験』のことは『春のセンバツ』と言い換えています」
「なるほどー! 面白いですねー!」
「子どもたちも、面白がって使っていますよ。やっぱり、ワクワクする言葉を使わないとやる気は出ないですよね。別に、『貯金』や『春のセンバツ』である必要はないと思います。ほかの言葉で、もっと子どもたちがワクワクする言葉なら何でもいいと思います。それも、本当は大人が決めるのではなくて、『どんな言葉に置き換えたらワクワクする?』と子どもと一緒に考えたほうがもっといいかもしれませんね」
Mさんの発想力には、とても感動しました。早速、試してみたくなりませんか。



ポジティブな意味付けをする

話は変わりますが、これは、私のコーチ仲間のYさんが、眉をひそめながら話してくれたことです。Yさんのお子さん(小学4年生)が、「今日は、子どもの日だから、先生が宿題なしにしてくれたんだよ!」と、会う人ごとにうれしそうに話していたことがあったそうです。「宿題をやらなくていいことが、よほどうれしいんだな」とYさんは思ったそうですが、「『子どもの日だから、特別に宿題は免除』っていう言い方、いかにも、宿題はイヤなものというイメージの刷り込みになっている気がするんですけれど、どう思いますか?」と話してくれました。私も、Yさんが感じられたとおりだと思いました。「宿題」を、あたかも子どもに対する罰ゲームのように扱うことで、子どもは一層宿題嫌いになるように思います。
宿題としてやる勉強も、受験のためにやる勉強も、本来は、自分の夢や興味につながっていくとても大切で楽しいものではないかと思います。勉強は、まさに、将来の自分への投資や貯金だと言っていいでしょう。大人の私たちが、「嫌だけど我慢してやるもの」といったネガティブな意味付けをしないで、「楽しいもの」「役立つもの」というポジティブなとらえ方をしたいものです。ちなみに、私のコーチング講座では、宿題を出す時は、「筋トレだと思ってやってみてくださいね。毎日やると、コーチングの筋肉が付いてきて、どんどん上手にできるようになっていきますよ」と伝えています。
ご家庭で、ワクワクする言葉ややる気がわいてくる意味付けを、お子さんと一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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