「勉強が楽しい」と感じる子どもを育む言葉かけ[やる気を引き出すコーチング]

「夏休みは部活と勉強でとにかく忙しかった。あっという間だった」という話をしてくれた中学2年生のAさんに、「そうだったんだね!充実してたんだね!」と伝えたところ、一瞬、とても不思議そうな顔をされました。

「そんなふうに言われたのは初めてです。そっか!そう言われたら、すごくいい夏休みだったって思えてきました」と言いながら、Aさんの表情が笑顔に変わりました。
「いつもはどんなふうに言われているの?」
「大変だね!しんどいけどがんばってね!って感じかな。
そんなAさんには「充実」という言葉がとても新鮮だったようです。

■大人の言葉によって「前提」が刷り込まれる

例えば、家族で旅行やレジャーに出かけ、帰ってきた時、どんな言葉を最初に言っていますか?
「はぁ、やっと帰ってきた!疲れた〜!」などと言ったりしてはいないでしょうか。

つい、何気なく言っている大人の言葉が、子どもに自然と「前提」を刷り込んでいきます。「出かけると疲れるものだ」「自分と出かけることで、親を疲れさせてしまうんだ」といった考えを無意識のうちに与えてしまうのです。

一方で、こんな時、こんなふうに言ってみたらどうでしょうか。
「今日はすごく楽しかったね!また行きたいね!」
子どもには「一緒に出かけると楽しい」という前提が刷り込まれます。

同様に、テスト勉強や宿題をやり終えた子どもに、どんな言葉をかけているでしょうか。
「お疲れ様!よくがんばったね」という言葉は、決して悪くはないのですが、やはり、ある前提を埋め込んでしまいます。
「勉強は疲れるもの。がんばってやるもの」という前提です。

「やってみてどうだった?」ときいた上で、本人が「疲れた」と言えば、「そう!疲れたんだね。そこまで集中してやったんだね」と、受容と承認をしてあげたらいいと思いますが、最初から、「疲れたよね!大変だったよね!」という前提でこちらが関わると、子どもは、勉強にネガティヴなイメージを持つようになってしまいます。
せっかく伝えるのなら、「勉強は楽しいもの。やり出したら、おもしろくてどんどんやりたくなってしまうもの」という前提が刷り込まれる言葉だと良いと思いませんか。

■マイナスの暗示をプラスの暗示に差し替える

私の知人のSさんは、そんな言葉の使い方がとてもうまいお母さんです。小学生の子どもたちに対して、どんどんプラスの前提を刷り込む言葉をかけていきます。
「今日もまた頭の中の貯金が増えたね!毎日勉強してると、どんどんお金持ちになっていくね!」
「一緒に勉強すると楽しいね!」
「これができたら、あとはもっと簡単だね!」
「あなたたちだったら、もっと早くできそうだね!」

もちろん、日によって、気分のムラはありますが、基本的に、Sさんの子どもたちは「勉強は楽しいもの」と思っているそうです。
まず、大人が「勉強は楽しいもの」「自分の夢を叶える可能性を広げてくれるもの」という前提を持っていたいものです。

ところが、マイナスの暗示を与えるような言葉かけをしていることはないでしょうか。
「このままだと遅れるよ」
「勉強しないと、テストでいい点取れないよ」
「がんばらないと、認めてもらえないよ」
「だからダメなんだよ」
「それでは結果は出ないよ」
「社会に出たらもっと厳しいよ」
これらを全部プラスの暗示に変えてみたらどうでしょうか。

「少しスピードを上げると、きっと間に合うよ」
「勉強したら、もっとテストでいい点取れそうだね」
「ここでがんばっておくと、自分も周りもハッピーになるね」
「ここがあなたの良いところだね」
「ここから結果が出せたら、おもしろくない?」
「社会に出たら、もっといろんなことができるようになるよ」

こうした言葉の差し替えを、お子さんと一緒にやってみるのも楽しいかもしれませんね。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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