算数の「場合の数」を授業で一度説明を聞いただけでは、なかなか理解が難しい[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小6女子(性格:大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま
質問
今、学習している「場合の数」が苦手なようです。まちがえた問題やわからない問題も、やり直すと解けるのですが、授業で一度説明を聞くだけでは、なかなか理解が難しいように感じます。
小泉先生のアドバイス
「十分にわかった」になるまでには、授業の説明を聞くだけではなく十分な演習量が必要。
授業を受けて「理解」し、演習問題をこなして「定着」していくのが算数の勉強方法ですが、「理解」にもいくつかの段階があると思います。たとえば、「あまりよくわからない」「わかったつもり」「わかった」「十分にわかった」の4段階に分けて考えてみましょう。
まず、「あまりよくわからない」の段階とは、先生が授業で何を説明しているのかわからない、あるいはかなりの部分がわからないというレベルです。授業に集中できずに説明を聞きもらした場合は、授業後に質問して疑問を解消しておくことが必要でしょう。疑問が未解決のままで先に進むと、より多くの疑問を抱え込むことになります。また、先生の説明をしっかり聞いてもこのような「あまりよくわからない」状態であれば、前の単元からつまずいている可能性があります。その単元から苦手を取り除く必要があるでしょう。
次は、「わかったつもり」の段階。自分では「わかった」と思えても、多くの場合はこの「わかったつもり」になっていることが多いようです。この段階では、説明された問題ならば解けますが、類題レベルになると解けない問題が出てきます。それは、その問題の解き方を暗記しているだけで、その単元に特有な解法をしっかり理解していないためです。
解法を暗記しているだけですと、自分で何をやっているのかわからない場合が多いため、少し目先の変わった問題になるだけでとたんに解けなくなります。この段階の皆さんは、まずは覚えた解き方の意味をしっかり理解することが大切です。自分で立てた式の意味を一つひとつ理解することで、類題やもう少し難しい演習問題レベルにも十分対応できるようになるでしょう。そのためには、やはりある程度の問題数をこなしていくことが必要になります。
お子さまの場合、「まちがえた問題やわからない問題も、やり直すと解ける」ということですから、恐らくこの段階にあると思われます。
類題や演習問題を十分にこなすことで、解法の意味を十分に理解できれば、次の段階である「わかった」に到達できると思います。
「わかった」の段階では、類題や演習問題はもちろん、やさしい入試問題でも解けるレベルになります。その単元の解き方を十分に理解していますから、試行錯誤はあるかもしれませんが、なんとか答えまで持って行くことができるのです。解法の手順にも慣れてきているでしょうから、時間的な制約のある試験にもしっかり対応して、点数的にも成果を出せる段階だといえるでしょう。
ただし、いわゆる応用問題や考えさせる問題などの難問には手が出ない場合があります。これらの難問が解けるようになるには、やはり最後の段階である「十分にわかった」までになることが必要です。
「わかった」と「十分にわかった」の違いは、解法の理解からさらに進んで、その単元における「原理・原則」までも理解したかどうかによると思います。
たとえば比を使った計算では、とかなどのいわゆる「マルイチ算」と総称される解き方を使いますが、単に「そうするもんだ」とやり方を理解するのか、あるいは、やで「何を表しているのか?」「なぜそうするのか?」という「原理・原則」をわかっているかどうかでは、その学力の差には大きな開きがあるのです。特に、ご指摘の「場合の数」は「数の性質」「規則性」などとともに「考える問題」として超難関校や難関校に頻出であり、「原理・原則」までの思考を求められるレベルの問題が出題されやすい単元といえます。
このように、算数は授業の説明を聞くだけではなかなか十分に理解はできない教科です。たとえ理解できたと「わかったつもり」になっても、実はそこからがスタートであり、「十分にわかった」になるまでには十分な問題演習量が必要であると考えてよいでしょう。