急成長する「ネットの学校」N高に聞く 子どもが集中し、学びを深めるオンライン授業のかたち

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コロナ禍にある昨今、子どもたちが継続して学べるように、「オンライン授業」を模索する自治体や学校が増えています。生徒数2万人以上(※)の「ネットの高校」N高等学校(以下N高)は、2016年の開校時からオンライン授業を行い、様々な改良を続けているといいます。奥平博一校長先生に、最新のオンライン授業とこれからの学校教育の在り方についてお話を伺いました。
※2021年8月23日時点でN高と4月に開校したS高あわせて20,441人が在籍

双方向なオンライン授業を展開しているN高

最新オンライン授業はここまで進化した

—N高のオンライン授業について教えてください。

 N高はインターネットと通信制高校の制度を活用し、オンライン学習と年5日程度のスクーリング(実際の学校で授業を受けること)で、高校卒業資格が取得できる学校です。授業は高校卒業資格に必要な「必修授業」と「課外授業」で成り立っており、必修授業は録画配信型の映像学習が中心で、時間や場所を選ばず、どこからでもネットを使って学べます。課外授業では、自分がやりたいことを好きなだけ自由に学べます。大学受験対策やプログラミングの授業などは、理解をさらに深めるために、アンケートや挙手機能で生徒の理解度を確認し、生徒はリアルタイムでコメント機能から質問するなど、双方向な授業を行っています

—オンライン授業とリアルな学校での授業との違いはどこにありますか?

 子ども達をひきつけて教育効果を生んでいかなくてはいけないという点では、リアルでもオンラインでも同じです。例えば「体育」の授業などでは、オンラインの方がよい場面もあります。「体育をオンラインで?」と思われるかもしれませんが、体育の授業でよく行われるダンスは、実際リアルの場で40人の生徒が一斉に踊るとなると、中には恥ずかしがって、なかなか踊れない、踊らないという子が出てきます。ところがオンラインでやると、子どもたちが部屋で一生懸命踊っている(笑)。オンラインだからこそ、横の目を気にせずに集中して取り組めるという例です。これは他の教科の授業でも応用できると思います。他にも、教室ではまわりの目があるので「分かりません」とは、なかなか言いづらいものですが、オンラインであれば、チャットで打ってその場で先生に質問できますし、授業の映像は後で見直すこともできるので、自分のペースで理解を深められるというメリットもあります
 また、知識をインプットするような授業であれば、オンラインであっても双方向にこだわらずに一方通行でもいいと思っています。その知識をもとに、問題点をみんなで考えたり意見を出し合ったりすることに、双方向で「みんなで」授業をする意味があると思うからです。
 最近N高では、オンラインの好きな時に好きな場所で学べるというメリットはそのままに、VR空間で教材を体感しながら、仲間と同じ空間で学べるオンラインVR授業を一部スタートさせました。VRの技術を使うことで、実際には難しい実験なども行うことができ、学びをより深められると思っています。

VR空間で実際の教材を体感しながら仲間と一緒に授業に参加

オンライン授業は先生をサポートする体制も大事

—オンライン授業を行うことで、これまで以上に先生の負荷が増えることも懸念されます。この点についてどのような解決策があるとお考えですか?

 N高のオンライン授業では、授業を行う先生以外に必ずサポートの先生をつけています。授業を行っている先生は授業に集中しているので、生徒の様子を見て、個別にメールをしたり、チャットをしたり、そういうきめ細かいサポートをする先生が必要になってくるからです。そのサポート業務は、授業を行う先生の横にいなくても全国どこからでもできますので、2019年より100%在宅勤務としてご家族の転勤などで教員を辞めてしまった方などをリモートワーカーとして採用し、授業などの補佐を行ってもらっています。オンライン授業は生徒だけでなく、先生の働き方にも、ものすごく関わってくることだと思います。その他にもネット回線がつながりにくい場合や、パソコンがうまく使えない時のテクニカルサポートをするスタッフもいます。先生が授業に集中できるように、オンライン授業にはそういった先生のサポートも重要になってくると思います。

—ネットの高校を運営する上で気をつけていることは?

 今の子どもたちのコミュニケーションの場はSNSをはじめとしたネット上に多くあります。何か問題が起こった時に、教育現場ができることとしては、ネットはダメだと規制して守ることではなく、コミュニケーションの取り方を教えることだと思っています。
 N高のコミュニケーションはネット上で行うことが多い分、よりモラルを大切にしています。例えばSlack(※)というツールを活用し、学校からの連絡だけでなく、担任の先生や友だちとの雑談、交流などもこの場で行っています。そうすると、例えば暴力的な発言をしている子がいればその子をしっかり見ていくことでトラブルの芽を見つけ早急に対応ができます。学校はもっと子どもたちのコミュニケーションの場になっているネットに深く入っていくべきだと思います。世の中で、その時に必要とされていることを学べる場所が学校であり、教育なのです。
 ※多くの企業で導入されているビジネス向けコミュニケーションツール。
 また授業だけではなく、「学校」という側面をどうオンラインに持たせるかが課題です。仲間がいて、先生がいる。そういうものがあってこそ、学びの動機付けにもなりますので、オンラインとリアルを融合させながら、教育の質をもっともっと高めていきたいです。

まとめ & 実践 TIPS

オンライン授業は一方向と双方向を授業の特性に合わせて使い分けることで、効果・効率が上げられるようです。また、オンライン授業には授業が録画されている場合は復習に活用できたり、横の目を気にせずに集中して学べたりというメリットもあり、オンライン授業を通して、これから何をどのように学び取るかを考えるきっかけになりそうです。

プロフィール

奥平博一

奥平 博一 / N高等学校 校長

30年以上教育関連事業に携わる。通信制高校の可能性を信じ、新しい教育の提供を使命とする。N高等学校の設立準備から参画。N中等部のスクールプレジデントを兼任。

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