「ピア効果」による学力の伸長[中学受験]
「ピア」は「peer」とつづり、仲間、同級生、クラスメートなどの意味がある。「ピア効果」とは、一緒に教育を受けるグループの特性が、教育成果に及ぼす影響のことである。言い換えると、これは学力が高い人々が集うことによって、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、さらに高め合うことを期待できる効果であるといえる。しかし、集った人々に学力だけではなく意識や意欲がなければ、効果は半減する。つまり、「ピア効果」は能力と意識・意欲が高い人が集まる場に生まれることになる。
塾を選定する際にも、「ピア効果」を狙うのであれば、学力と意識・意欲の高い生徒と教師が集う塾を選ぶことになる。しかし、塾の選定では「ピア効果」がすべてではないようだ。「ピア効果」だけで塾を選ぶならば、一定の塾だけに生徒が集まることになるが、実際はそうなっていない。もしも、「ピア効果」だけで考えるならば、切磋琢磨し合う他の生徒がいない個別指導塾を利用する生徒は、少なくなるはずだ。また「ピア効果」だけを考えて、学力の高い生徒が集う塾に入れたとしても、我が子の学力が授業に付いていけないレベルだった場合には、周囲の生徒に圧倒されてしまい、「ピア効果」の恩恵にあずかるどころではない。
保護者としては、学校での「ピア効果」に期待したいところだろう。私立中高一貫校では、中高6年間「ピア効果」により、我が子の学力だけでなく、人間力を伸ばしてくれる可能性がある。中学から、私立ならではの豊かな学校生活を送らせたいという保護者のほとんどは、私立中に集う学力と意識・意欲の高い生徒と教員に「ピア効果」を期待しているのではないか。入試に運よく合格する生徒もいるかもしれないため、すべての生徒が同じように学力が高いとはいいきれない。しかし、偏差値の高い学校には、当然ながら、学力が高い生徒が多く集まりやすい。そして、偏差値が低い学校には、学力の低い生徒が集まりやすいことも事実だ。保護者が、我が子の実力で合格できる範囲の、なるべく偏差値の高い学校に進学させたいと願うのは、学力による「ピア効果」に期待しているからであろう。
しかし、中学入試の偏差値が高い割に、大学合格実績が低い学校がある。それらの学校では、学力は高くとも、意識・意欲の低い生徒や教員が多いのではないだろうか。意識・意欲の低い理由のひとつとして、たとえば、第一志望ではない入学者の割合が大きいことが考えられる。中学入試の偏差値が低くとも、意識・意欲の高い生徒と教員が集う学校では、意識・意欲の「ピア効果」が期待できる。そのような学校には活気があるので、保護者は学校説明会などの学校訪問時に、さまざまなことを確認しようとするのである。しかし、学校全体の雰囲気が活気に満ちているのか、単に騒々しいだけなのか判断に苦しむ場合もある。そんな時は、入学時の偏差値が同程度の学校で、6年後の大学合格実績を比較すれば、その結果から判断できる。