東京農大教授 「学問の醍醐味は大学に入ってから」は非現実的
カイコなどの虫が吐くシルク(糸)の機能を利用して、様々な製品を開発しているのが、東京農業大学農学部の昆虫学研究室だ。紫外線を99%カットする日傘、メタボ予防のゼリー、2日間履き続けても臭わない靴下など、多くの商品が生まれている。同研究室に所属する教授の長島孝行氏はこう話す。
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「私が研究を始める以前には、カイコ以外の虫の吐くシルクに価値があるとは誰も考えていませんでした。しかし私は、繭を壊された虫が、すぐに一生懸命つくり直そうとする姿を見ているうちに、シルク自体に何か秘密があるのではないかと思い付き、それが、多彩な機能の発見やシルク製品の発明につながりました。常識に縛られず、自分の頭で考えることこそが大切なのです」
そんな研究について、そして中学高校での受験勉強について長島氏はこんな考えを持っている。
「高校までは受験勉強に専念し、学問の醍醐(だいご)味を味わうのは大学に入ってからという考えは、もっともらしく聞こえますが、現実的ではありません。大学で専門的な勉強が本格的に始まるのは3年生以降。しかし、ちょうどそのころには就職活動も始まり、時間を奪われてしまいます。その結果、学問の醍醐(だいご)味を味わえず、自分の頭で考える力も付けられないまま卒業し、社会に出てから初めて壁にぶち当たり、乗り越えられないまま会社を辞める──そんな悲劇を招きかねないのです。
そんなことにならないように、中学生や高校生のうちに、受験勉強だけでなく、好きなことにも打ち込ませてあげるべきだと思います。好きなことなら、壁にぶち当たっても自分の頭で考え、工夫して乗り越えようと思えますし、苦手なことにも挑戦しようとも思えるものです」
出典:東京農業大学 農学部 昆虫学研究室 高校生のうちに好きなことに打ち込み、悩み、苦しんで乗り越える経験を -ベネッセ教育情報サイト