図に描きなさいと言っても、描けないと言って騒ぎます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:神経質)のお母さま


質問

空間図形が苦手です。頭の中で形ができないようです。図に描きなさいと言っても、描けないと言って騒ぎます。


小泉先生のアドバイス

培われてきた表現方法を学ぶ、すなわちマネから入るのが一番良いでしょう。

立体をいかに平面で表現するか? それは、昔から画家たちにとっても大いなる課題だったわけですから、単に描きなさいと言ってもなかなか難しいかもしれません。ここは培われてきた表現方法を学ぶ、すなわちマネから入るのが一番良いでしょう。まずは、教科書や問題集に掲載されている代表的な立体図をじっくり見て、どのように描けば《それらしく見えるか》を練習してください。いくつかのコツをつかめば、スラスラと描けるようになると思います。

たとえば、立方体を描く場合は、正方形ABFEを描き、さらに少しずらして正方形DCGHを描きます(図1)。そして、A、B、F、EとD、C、G、Hをそれぞれ結べば良いのですが、ずらし方を注意しないと立方体に見えません(図2)。実をいうと、図2のABとBCの長さは等しいのですが、そのように描くと、BCのほうが長いように見えて直方体になってしまいます。どのくらい短めに描けば、立方体らしく見えるか? それは、何回か描いているうちにコツがつかめてくると思います。さらに、通常は見えないDHやEHなどの裏の辺の部分は、破線で描くというのも約束事です。
このように描くことで、いかにも美しい立方体が描けるようになりました。すると、図を描かなくても、頭でイメージできるようになります。いわゆる空間把握能力が向上したと言えるでしょう。


【図1】【図2】


円すいを描く場合は、底面の円を楕円で表現するのがポイントです(図3)。もちろん通常は見えないであろうところは、破線で表してください。
このように、代表的な立体図形がしっかり描けるようになると、より複雑なものも代表的な立体図形の組み合わせということで描けるようになります。そして、描けるということはすなわち、頭のなかでイメージできるということです。なお、芸術作品ではありませんから、デッサンのように図に影をつける必要はもちろんありません。


【図3】


さらに、ボール紙などで実際に立体図形を作って、その見え方を実感するのも有効だと思います。たとえば、円すいに糸を最短になるように巻きつける問題はよく出題されます(図4)。一回解き方を覚えてしまえば、そんなに難しい問題ではありません。
しかし、実際に作った円すいに線を引き、そしてそれを展開して最短の時はその線が直線ABのようになることをお子さまに体感させてみてください(図5)。理屈ではわかったような気になっていても、実際にやってみると「なるほどー」という感じで、少し感動することうけあいです。このように、立体図形の問題も、平面上の紙と鉛筆だけの世界ではないことが理解できれば、立体を把握する能力は大幅に向上すると思います。


【図4】  【図5】


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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