「内申」に対して否定的な発言は慎しむ[内申対策、保護者ができること 第2回]

「策」に溺れない

 「内申」に関することでまず保護者のかたにお願いしておきたいことは、第1回で挙げた例のような、ネガティブな発言をお子さまの前でしないでいただきたいということです。

 「〇〇先生は自分の言うことをよく聞く子にいい成績を付けるようだから、あなたも気に入られるようにしないとね」とか「テストで100点を取ったAくんが4なのに、80点のBさんが5なのはおかしい」「あなたのために、お母さんは今度PTAの役員に立候補することにしたからね」……といったたぐいのことです。
 こんなことを聞かされて、お子さまは勉強のモチベーションが上がるものでしょうか。
 また、コンサートに行ったら音楽の先生に、展覧会に行ったら美術の先生に、スポーツ観戦に行ったら保体の先生に「必ずそのことを報告するのよ」「授業では、わからなくてもいいから挙手するのよ」「なんでもいいから先生に質問に行くようにしなさい」などという保護者のかたがいますが、そんな『知恵』は、長い目で見ればお子さまの成長にはむしろマイナスです。

 合格だけを考えると、保護者としては自分が打てる手はすべて打ちたくなります。その心情はわからないでもありませんが、長い人生を考えると、合格よりもっと大切なことがあります。子どもを育てるということは、一人前の社会人として責務をきちんと果たす人間にするということです。そうした観点から考えた時に、お子さまの人間性の成長にマイナスになるようなことはしないほういいと思うのです。



正当な努力であれば徹底的にさせる

 とはいっても、私は内申点を上げる努力を否定しているわけではありません。
 ・ 定期テストに向けては、毎回精いっぱい努力をする。
 ・ 提出物、宿題にも真剣に取り組み、必ず期限以内に出す。
 ・ どの授業も集中力を持って受け、積極的に発言する。
 ・ 学級活動、クラブ活動にも積極的に参加し、友達にも協力する。
というような当たり前のことは、むしろきちんと実践してほしいのです。当たり前のことを3年間きちんとやり続けることが、一番大切なことです。これらが実行できれば、おのずから「内申点」はよくなります。「内申点」というのは、そうした努力の根拠をもとに付けられるものだからです。



「内申点」の付け方は学校ごとに決まっている

 先のような「内申は先生が恣意(しい)的につけているのではないか」という不安を持っている方が少なからずいるので、ここで少し説明しましょう。
 学期ごとにお子さまが持ち帰る「通知表」をご覧になっていると思います。「学習の記録」の欄には、5段階で付けられる「評定」の欄と「観点別学習状況」の欄があります。この「観点別学習状況」には「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の4つの欄があり(教科によって少しずつ表記は異なっており、国語には5つの欄があります)、A・B・Cの3段階で評価が記入されます。
 「観点別学習状況」の評価が、オールAなら5とか、Aが2つか3つで残りがBなら4とか、オールBなら3とか、BとCが混じっていれば2とか、学校ごとに事前に決められているのです。そのため、先生個人の恣意的な部分は入りにくいのです。

 保護者のかたご自身が、学校や先生を信頼することが、お子さまが安心して勉強に集中できる環境をつくることにつながると思います。お子さまが、学校や先生を信頼して初めて、学んだことがより身に付くのです。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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