文化祭では在校生を観察する[中学受験]

森上教育研究所で行った調査の中で、「志望校の決定権が最も強いのは受験生ご本人である」というご家庭は、60%以上という結果がある。しかも、年々その割合が増加している傾向がある。ただし、子どもに決定権があるご家庭でも、選択肢となる学校は親が選定していることが多い。文化祭は子どもが参加しやすいイベントなので、ぜひ、お子さんを連れて行ってほしいが、子どもを文化祭に連れて行く学校は事前に親が選定した学校でなければならない。そうでなければ、いくら決定権が受験生本人にあるからといっても、親が不本意な学校を子どもが気に入ってしまうことにもなりかねない。

文化祭で在校生を観察するならば、学校内だけでなく、最寄りの駅や登下校で在校生の様子を観察し、生徒同士の会話や周囲の人に対する対応で人間性を判断できる。周囲の人の迷惑となる行為をしていないかという観点で観察するのもよい。たとえば、登下校時にほかの人の通行の妨げになっても気が付かない、多くの人が集まる駅で大騒ぎをしているなどだ。駅では、他校の生徒と間違えることもあるので制服を覚えておこう。

学校にはいろいろな生徒がいると思うので、一部の生徒を見て学校全体を評価することはできない。文化祭では、いろいろな生徒がいるという前提で、意識的にいろいろなタイプや学年の生徒に話しかけるとよい。タイプや学年が違えば、「礼儀が正しいか」「はきはき答えられるか」などは確認しづらいが、「イキイキしているか」「楽しそうか」「やる気が感じられるか」ならば学校全体としてはどうかが確認できる。

文化祭では、在校生はものすごくテンションが上がっているので、普段の様子とは違うということも考えられるが、テンションが高いことを割り引いて観察すれば、普段は構えているところが文化祭では本当のことがわかると考えることもできる。生徒にいろいろと質問をしても普段は型どおりの対応だが、文化祭の時は本音が聞けると考えることもできる。

親としては、在校生の言動で学校の「教育方針」や「校風」を評価するわけだが、我が子に合っているかは、家風に合っているかにも通じる。文化祭では在校生に気軽に話しかけられる雰囲気なので、できるだけ多くの在校生に話しかけてみるのが良いと思う。質問を一つか二つしてみて、在校生の雰囲気や話し方が≪しっくり≫くるかどうかという感覚で我が子に合った学校かどうかを判断することは、学校説明会に何度も参加するよりも明確になるかもしれない。

このように、文化祭では在校生の言動を観察することで学校全体がわかる。在校生がイキイキしていれば、学校全体もイキイキしているはずだ。我が子に合う学校かどうかは在校生とのコミュニケーションでわかると思う。自分に合う学校かどうかは、自分の感覚を信じて判断すれば大きくは外れないだろう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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