国立大学、3タイプの機能分化で明暗分かれる

文部科学省は、国立大学の特色化に向けて、2016(平成28)年度の運営費交付金の一部を重点支援するための審査結果をまとめました。その結果、運営費交付金を増額された大学は42校、逆に減額された大学は43校と、大学間で明暗が分かれました。2017(平成29)年度以降も重点支援のための審査を続けていくことになっており、国立大学間で予算獲得競争が激化することになりそうです。

  • ※平成28年度における国立大学法人運営費交付金の重点支援の評価結果について
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/03/1367853.htm

国立大学が「ミニ東大」を目指して均一化するのではなく、それぞれの大学の特色を打ち出し、多様な教育研究を実施するため、文科省は2016(平成28)年度から、国立大学を、次の3タイプに機能分化させました。

(1) 「卓越した教育研究」タイプ……北海道・東北・筑波・千葉・東京・東京農工・東京工業・一橋・金沢・名古屋・京都・大阪・神戸・岡山・広島・九州(16大学)
(2) 「専門分野の優れた教育研究」タイプ……筑波技術・東京医科歯科・東京外国語・東京学芸・東京芸術・東京海洋・お茶の水女子・電気通信・奈良女子・九州工業・鹿屋体育・政策研究大学院・総合研究大学院・北陸先端科学技術大学院・奈良先端科学技術大学院(15大学)
(3) 「地域貢献」タイプ……上記以外(55大学)

この機能分化をさらに推進するため、国立大学に配分される運営交付金の一部をあらかじめ減額しておき、その予算を、機能分化の推進のため優れた取り組みをしている大学に、重点的に配分するという仕組みを、2016(平成28)年度から導入しました。具体的には、各大学がタイプに応じた大学改革や教育研究を推進するための「戦略」と、その具体的取り組み状況を審査し、その結果によって交付金を増減するというものです。2016(平成28)年度は運営費交付金の約1%に当たる101億円が再配分の対象となっています。

審査結果によると、「卓越した教育研究」タイプで、予算を増額されたのは北海道大学・九州大学など10大学、逆に減額となったのは6大学となりました。「専門分野の優れた教育研究」タイプでは、増額が東京芸術大学・東京医科歯科大学など8大学、減額は7大学、「地域貢献」タイプでは、増額が岩手大学・三重大学など24大学、減額は30大学となっています。なお、旭川医科大学は、重点枠の予算申請をしませんでした。

たとえば岩手大学は、岩手県と連携して地域創生や震災復興を担う人材を育成するための学部再編計画などが高く評価され、九州大学は、世界トップ100の大学とのネットワークを強化する「グローバルコア戦略」などが評価されています。2017(平成29)年度以降は、各大学が「戦略」の実施状況などを審査されることになるため、国立大学間の競争は、さらに激しくなるでしょう。

ただし重点枠の予算の増減は、あくまで機能分化のためのもので、大学の優劣を意味するものではないということに注意しておく必要があるでしょう。それでも各大学がどのような「戦略」を立て、どんな取り組みを計画しているのかは、大学選びの大きな参考の一つになりそうです。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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